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第144話
「夕くんは好きな人いないの?」
「好きな人かぁ」
ドーナツを食べた鳥居さんが「んー」と考えて出した答えは
「多分、居るんだけど···でも、俺って恋愛の好きって言う気持ちがわかんないからさ、これがそうなのかどうかはわからないんだよね」
「そうなの···?」
「うーん。やっぱり、ほら、友達が居なかったから」
ケラケラと笑い飛ばすようにそう言った鳥居さん。
友達が居なかった?どうしてだろう。こんなに素敵な人なのに。
「俺はね、昔、ずっと喧嘩してたんだよ」
そんな俺の気持ちがわかったのか、鳥居さんが俺の顔を見て優しい声で言う。
「だから、周りを怖がらせてね、誰も近づいてこなかったし、わざわざ俺から近づくこともなかった」
「寂しくなかったんですか···?」
「その時にはもう命さんも早河さんも、若もいたし。まあ、だから、寂しくはなかったかな」
俺ならきっと寂しい。けれど鳥居さんは何でもないっていう風に笑うから、そうなんだ。と頷いてみせた。
「まあ、本当に誰かを好きになったなら、こんな冷静に好きな人の話なんて出来ないと思うよ、俺」
「ねえ夕くん!もし、そんな人に出会えたら、教えてよ」
「うん。ユキくんと、若と、それから···陽和くんにも話すよ」
俺に話をしてくれるとは思ってなかったから驚いて思わず「えっ」と声が漏れた。
「教えるよ。だって、友達だもん」
そう言って笑った鳥居さんの表情はすごく優しかった。
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