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第145話

17時をすぎた頃、玄関から音が聞こえてきた。 「命だ!」と声を上げて玄関に走って行ったユキくんと、それを追いかける真っ白な猫。 今までどこにいたんだろう?全く気付かなかった。 「命、おかえりなさい!」 「ただいま」 リビングに二人が来るのを鳥居さんと待つ。 「お邪魔してます!」 「命さぁん!おかえりなさーい」 リビングに来た命さんは俺達に向かって優しく笑い「ただいま」と言った。 「鳥居は愚痴りにって聞いてますけど、陽和さんは?」 「俺は元々鳥居さんと約束してて···、ごめんなさい、突然押し掛けちゃって」 「いいんですよ、ユキも楽しそうだし」 ユキくんが白い猫を抱っこしながら命さんにピタリと寄り添う。 「好きな人のお話してたの」 「へえ?」 「あのね、俺は命が大好きだけど、ひよくんはハルくんのこと大好きだよねって」 「そうだな」 ユキくんの命さんが大好きって言う言葉が嬉しかったのか、ユキくんを抱き寄せて頬にキスをした命さん。 それだけでよかったのに、 「ハルくんの何が一番好きなの?」 「えっ」 思っても無かった質問をされて、慌てて「猫!」とユキくんの腕の中にいる猫を指さす。 「い、いたんだね!!綺麗だね、真っ白で!」 「でしょ?シロくんって言うんだよ」 シロくんの手を持って「こんにちは、シロです」と言いながら招き猫のようにシロくんの手を上下にしたユキくんに思わずクスッと笑った。

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