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第147話

その日の夜は何故かなかなか眠れなくて、隣にいるハルにぴったりと体をくっつけても眠気は襲ってこない。いつもならハルの温かさに安心してすぐに眠れるのに。 このまま寝れないって事を考えていたって眠れないと思って、起き上がり小さな音量でテレビを見た。 ハルは起きないように電気も少しだけつけて、クッションを抱えソファーに座る。 「そういえば、龍樹くんに会わなかったな···」 たまたまかもしれないけど、ハルが刺されたあの1件があってから、疑いの目を向けてしまうのは仕方のないことだと思う。 テレビでは前にやっていたドラマの再放送が流れてる。 このドラマ、何年前のだっけ。毎週欠かさず見ていたやつだ。 ドラマの再放送も終わり、時計を見ると日付はとっくに越えていて、明日も学校なのに···と嫌になる。 テレビと電気を消して、ベッドに戻りハルに擦り寄ると「ん···」とハルが声を漏らした。もしかして、起こしちゃったかな。 息をするのすら止めて、ハルの睡眠を妨害しないように努めた。少ししてもハルは起きる様子はないから体から力を抜きゆっくり息を吐く。 「···寝れないよぉ」 もうこれは、お酒の力を借りるしかない。 またベッドを抜けて、冷蔵庫からビールを取り出した。 「陽和」 「んぅ···ん」 捲られた布団を取り返して頭まで被る。 まだまだ眠たい。 「こら、陽和。起きろ」 「···や···だ」 「やだじゃねえよ、遅れるぞ」 ハルの優しい声が鼓膜を揺らして、ゆっくり目を開けて布団を目の下まで下げると「お前、酒飲んで寝たの?」と俺の頭を撫でた。 「昨日、なかなか寝れなくて」 「それで、あの量飲んだのか?」 テーブルに置きっぱなしの空き缶。 4本も転がっていてあんなに飲んでたんだ!と驚いた。 「···ごめん」 「いいよ。昨日なかなかお前に構ってやれなかったし、俺もすぐ寝ちまったから、悪かったな」 「ううん、ハルの体、まだ完治してるわけじゃないからね、疲れるのは当たり前だよ」 起き上がってハルにキスをする。 気持ちいい、ああもう、ずっとこうしてたい。 でもそういうわけにはいかず。結局身支度をして俺は今日も大学へ。 「いってきます」 「ああ。」 ハルに手を振って部屋を出る。 今日はなるべく早く帰ってこようと思いながら。

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