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第148話

今日はゆっくり歩いて学校に行く。 もう少しで学校に着く、といったところで龍樹君の後ろ姿を発見した。慌てて走りより肩を掴むと驚いて振り返った龍樹くんの目とバッチリ視線があった。 「ねえ!!話がある!」 「···組関係の事だよな」 「うん。ちょっと、聞きたいことがあるんだ。」 訝しげに眉を寄せた龍樹くんは俺の腕を掴んで「人目のないところ、行くぞ」と学校の研究室のある棟の奥の奥まで進む。 「で、何」 「···あの、えっと」 聞きたいことは、この間のハルのことだけど、こういうのってストレートに聞いてもいいのだろうか。 「何躊躇ってんの。早く話せよ。」 その言葉で、早く話さなきゃ。と急かされて「あの!」と勢いをつけて言葉を続ける。 「ハルを刺したのは龍樹くん?!」 「···は?何言ってんのお前。ていうか浅羽、刺されたのか?ザマァねえな」 その話し方や言葉に確信したのは、犯人は龍樹くんじゃないってこと。 「え···龍樹くんじゃ、ないの···?」 「そんなに俺を犯罪者にしたいのかよ。あいつのことは本当に殺してやりたいけどな、若と話をしたんだ。それからは本当にやってやろうなんて思ってない」 「じゃ、あ···誰が刺したの」 「知らねえよ。···まあ、あんたのその様子じゃ浅羽は死んでないみたいだし、この世界じゃ命があるだけよかったんじゃねえの」 「でも、俺、許せないんだ。だから、早く犯人を見つけてそれから───···」 「あのな」 俺の言葉を遮った龍樹くんは鋭い目で俺を見る。 「焦ったって意味が無い。俺はどれだけ殺してやりたくても、我慢してきた。そしたら浅羽の弱点が目の前にいるっていう好機が回ってきた。···今更あんたや浅羽に何かを仕掛けるつもりもない。けど、すぐそこにあんたらがいるってことに変わりはない。」 「だから···?」 「だから、あんたは何も無かったかのように振る舞えばいい。俺の思うに、犯人はすぐそばにいるだろうし、お前の何ともない姿を見れば、しくじったのかと思って、また現れるはずだ。そこを狙え。それまでは何もするな」 「···ただ、待ってろって?」 「違う。一番簡単な方法で犯人を捕まえるチャンスを逃すなって言ってる」 残念ながら、龍樹くんのの考えは正しい。 ハルを襲ったやつはきっと近くにいる。ハルが1人の時を狙ったわけだし。それにきっと俺のことも知っている。 「俺は浅羽は嫌いだけど、若に何かしてやれることがあるなら、してやってくれって頼まれてる。それにお前は浅羽じゃなくて白石だしな。お前の頼みなら、出来る範囲できいてやる。何かあったら言え」 「じゃあ、とりあえず友達になろう。それから一緒にこの事件を推理しよう」 「推理って···探偵気分かよ」 「ちょっと!友達って言葉無視しないでよ」 早く犯人を見つけ出すんだ。 その気持ちを込めて龍樹くんと握手を交わした。

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