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第153話

「で?話って?」 「···ハルを刺した犯人の事」 ああ、成る程。と数回頷けばまた陽和に睨まれる。 なんで睨んでくるんだよ。と小さく息を吐くと「あのさ、ハル」と厳しい声音で話しかけられる。 「もし、刺されていたのが俺だったらハルはきっと、血眼になってでも犯人を探すでしょう?」 「当たり前だろ」 「俺も一緒なの。ハルが刺されたって聞いた時は怖くてたまらなかったし、それに凄く···許せなかった。今だって俺は怒ってるよ。なのにハルがそんな、どうでもいいような雰囲気を出してることが凄くむかつく」 「どうでもいいって···」 まあ、確かに、刺されたのが俺でよかった。という思いがあるからか、焦ることも慌てることもない。仮に刺されていたのが陽和だったら、もっと焦って慌てて···走り回ってると思う。 「ハルのことが好きだから、ハルにもっと自分のことを大切に思ってほしい」 「ああ」 「約束して。自分を蔑ろにしないって」 「ああ。約束な」 陽和が笑顔で頷いた隣で中野は呆れたように溜息を吐いた。言いたいことはわかってる。どうせ話が進まないだとかそういう事だろう? 「それで?何かわかったのか」 「やっと話が出来る」 「悪かったな。」 「本当にな。いつまで続けるんだって思ったよ。···で、早速だけど、俺は裕也が怪しいと思ってる。」 「裕也?」 誰だっけ、そいつ。 聞いたことがあるような名前だ。 「え!?何で!?裕也はハルのこと知らなかったんだよ!?」 「手馴れてる奴こそそうやって初めて会った風を繕うんだよ」 陽和がこれ以上ないくらい驚いた表情をしてる。 いや、だから裕也って───···ああ、あいつか。 陽和に付きまとってた男を思い出して一人頷いた。 「お前らのこと、色々調べてた時に、ついでにあいつの事を調べた事がある」 「俺らのことを調べてたのか」 「まあ、俺はあんたを殺したいくらい憎いので。」 真正面からそう言ってくる奴は嫌いじゃない。 意外とこいつと仲良くなれるかも。と思いながら話を続ける中野の言葉を聞く。 「あいつは怪しいくらいに何も無かった」 「何も無い?」 「ああ。まるで初めから調べられる事がわかっていたかのように、偽の情報をあたかも真実のようにバラ撒いていたんだよ。だから初めこそそれが真実なんだって鵜呑みにしていたけど、どうも変だ。」 「何が」 「あいつの情報は全部、海外のサーバーを経由して作られてる。足がつかないようにされてんだ」 色々もややこしくて、話を聞いているだけでも疲れる。 まあでも、そこまでわかればいい方だ。 というか、よくここまで調べたなと思う。頭がキレる、そのメンバーは家にも沢山いるけれど、どれだけ居ても足りない。その力が是非欲しい。 「なあ、お前さ、うちで働かねえ?」 「それもいいかもな。いつでもお前を殺せる」 「そんなすぐには死なねえけどな」 「···でも、俺は木川組だ。あんたの力にはなってやっても、部下にはなりたくねえ」 「俺の部下の部下だろ、お前は」 「気に食わない」 どうやら心の底から俺を嫌悪してるらしく、でもその理由がよくわかっていない俺としては仲良くなりたいとしか思わない。 「俺のことはハルでいいぞ」 「誰が呼ぶか」 「俺はお前を龍樹って呼ぶけどな」 「呼ぶな、腐る」 こうやって俺に悪態を吐くやつも珍しいし面白いから。

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