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第154話
その日は龍樹と仲良くはなれなくて、帰ると言う龍樹を見送った後、部屋で陽和と大人しくソファーに座ったまま動かないでいた。
「ハル」
「何」
「···さっきの約束、絶対だよ」
「わかってるって」
そっと俺の隣に腰を下ろし甘えるように体を擦り寄せる陽和。その姿はまるで猫みたいで可愛い。
「陽和」
「何···?」
「明日、学校は」
「昼からだよ。どうしたの?」
「じゃあ、いいよな」
「え···あっ、だめ!まだ治ってない!」
陽和にキスをしようとすると手で塞がれて出来なくなった。あからさまに不機嫌です。というような顔をしてやると「そんな顔してもダメ!」と怒られる。
「今日するなら、完治してからも1ヶ月は相手しないからね」
「···それは困る」
「なら大人しくして。」
尻に敷かれるってこういう事だろうか。
陽和にはこの先、なかなか逆らえない気がする。
「そういえば、カラスさんに何頼んでたの?」
そんなことを考えていた時、ちょっとだけ声のトーンを落として、カラスとのことを聞いてきた陽和。声が低いのはさっきの頬にキスのことと、どうやら関係がありそうだ。
「あいつにも、犯人を見つけるように頼んだんだ。あとでその···裕也だっけか?あいつの事を伝えてみる。それであいつが頷けば決まりだ」
「···そうなったら、裕也のこと、どうするの?」
「どうもしない。ただ警察に突き出すだけだ」
「···それで、いいの?」
「陽和、お前、何か勘違いしてないか」
それでいいの?なんて台詞、おかしい。
普通はそうなんだ。悪いことをすれば警察に捕まり何らかの罰がある。
「俺たちは警察でも無けりゃ裁判官でも無い。」
「うん」
「そりゃあ、大切な組の情報とか、そういうのをそいつが持っていたら別だけどな、誰にだってチャンスはあるもんだろ」
「···俺、それじゃ納得出来ない」
「何でだよ」
「だって···ハルが刺されたんだもん···」
俺の首に腕を回し抱きついてきた陽和の髪を撫でる。
だんだんと、陽和が黒く染まってきてる。それは俺のせいなんだろうけど、決していい事じゃない。
「陽和、こうなったのは、俺のせいだけど、そういう考えはもうやめろ。」
「······わかった」
「もし、これ以上、お前がそういう考え方に進むようなことがあったら、しばらく距離をとろう」
「···そ、う···だね」
「俺はそうなって欲しくないから、もうやめような」
「うん、ごめんなさい」
悪いのは、俺だ。
この世界に陽和を連れ込んだのは俺なんだから。
「いや···俺が悪いんだ。ごめんな。」
何だか少し、世界が歪んだような気がした。
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