155 / 211
第155話
夜、陽和が眠ってからソファーに移動してカラスに連絡を入れた。
カラスに陽和達とした昼間の話をすると「有り得るね」という言葉を言ったっきり、何も言わなくなって、変な沈黙の時間が走る。
それを破ったのはカラスの方。
「───あのさ」
「何だ」
返事をしてから、また無音。
言うべきことか、そうでないのかを判断してる様だ。
「えっと···今日、俺、陽和くんに会ったでしょ?」
「ああ」
「···あの子、兄弟いない?お兄さんか、弟か」
「いや、そんな話は聞いたことねえけど。そもそも陽和は家族の話をあんまりしてくれないから。ていうか、突然なんだよ。」
何か言いにくい事なのだろうか。
若干の不安を覚えながら話をするように促す。
「もし、だよ。···もし、彼に兄か弟が居たとして、その人が陽和くんによって怖い場所にいるとしたら、どうする?」
「その話の元はどこだ」
「今調べてた。陽和くんのこと。陽和くんの家族は彼を含めて四人」
「ああ」
「両親がいることは確認できた。でも、もう一人が行方不明になってた。」
モゾっとベッドにいる陽和が寝返りを打った。
「その1人をさっき見つけたんだよ。でもね、今いる場所は西の、浅羽とはあんまり仲良くない組の坂西会だ」
「···坂西会っつったら西のトップじゃねえかよ」
「どういう経緯でそこにいるのかはわからないけど、何かしら陽和くんは関係してると思うよ。だって、今日、俺を見る目はただの一般人のそれじゃなかったからね」
「───ハル?」
目を覚ました陽和が俺の名前を呼ぶ。
振り返って「どうした」と返事をすれば「寝ないの?仕事?」と目を擦りながら聞いてくる。
「ああ、ちょっとな。でももう寝るよ」
「···そう」
「お前は明日も朝から授業あるんだろ?俺のことは気にせずに寝ろ」
「うん、でも···寂しいから、こっち来て」
「わかった。」
カラスには申し訳ないと思いながら通話を切った。
また明日、陽和のいない時に電話をしよう。
「俺がいないと寂しいの、お前」
「うん。だって、ハル温かいもん」
ベッドに寝転べばスリスリと体を寄せてきて目を閉じる陽和。髪を撫でて、おやすみ、と額にキスを落とすとすぐに眠りに落ちて小さな寝息を立てた。
ともだちにシェアしよう!