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第155話

夜、陽和が眠ってからソファーに移動してカラスに連絡を入れた。 カラスに陽和達とした昼間の話をすると「有り得るね」という言葉を言ったっきり、何も言わなくなって、変な沈黙の時間が走る。 それを破ったのはカラスの方。 「───あのさ」 「何だ」 返事をしてから、また無音。 言うべきことか、そうでないのかを判断してる様だ。 「えっと···今日、俺、陽和くんに会ったでしょ?」 「ああ」 「···あの子、兄弟いない?お兄さんか、弟か」 「いや、そんな話は聞いたことねえけど。そもそも陽和は家族の話をあんまりしてくれないから。ていうか、突然なんだよ。」 何か言いにくい事なのだろうか。 若干の不安を覚えながら話をするように促す。 「もし、だよ。···もし、彼に兄か弟が居たとして、その人が陽和くんによって怖い場所にいるとしたら、どうする?」 「その話の元はどこだ」 「今調べてた。陽和くんのこと。陽和くんの家族は彼を含めて四人」 「ああ」 「両親がいることは確認できた。でも、もう一人が行方不明になってた。」 モゾっとベッドにいる陽和が寝返りを打った。 「その1人をさっき見つけたんだよ。でもね、今いる場所は西の、浅羽とはあんまり仲良くない組の坂西会だ」 「···坂西会っつったら西のトップじゃねえかよ」 「どういう経緯でそこにいるのかはわからないけど、何かしら陽和くんは関係してると思うよ。だって、今日、俺を見る目はただの一般人のそれじゃなかったからね」 「───ハル?」 目を覚ました陽和が俺の名前を呼ぶ。 振り返って「どうした」と返事をすれば「寝ないの?仕事?」と目を擦りながら聞いてくる。 「ああ、ちょっとな。でももう寝るよ」 「···そう」 「お前は明日も朝から授業あるんだろ?俺のことは気にせずに寝ろ」 「うん、でも···寂しいから、こっち来て」 「わかった。」 カラスには申し訳ないと思いながら通話を切った。 また明日、陽和のいない時に電話をしよう。 「俺がいないと寂しいの、お前」 「うん。だって、ハル温かいもん」 ベッドに寝転べばスリスリと体を寄せてきて目を閉じる陽和。髪を撫でて、おやすみ、と額にキスを落とすとすぐに眠りに落ちて小さな寝息を立てた。

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