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第163話

泣き疲れて眠ってしまった陽和をベッドに寝かせ、俺は琴音に頼まれていた早河の事を親父に伝えに行く。 足取りが重い、足取りだけじゃなくて体も心も重たい。けれどそれは全て自業自得だ。 「親父、入るぞ」 「ああ」 親父の部屋の前で声をかけ、中に入る。 親父は俺を見た途端に眉間に皺を寄せた。 「体調が悪いのか?」 「···いや」 「何だ、どうした」 「最近早河が無理してるから、明日休ませる」 「わかった。で?お前はどうしたんだ」 「···ちょっと、疲れた。···陽和に、辛い思いばかりさせてるし」 ソファーに座って項垂れる。 そんな俺が呟く言葉を親父は全部拾ってくれる。 「だからもう、自由にさせてやらないと、あいつはダメになっちまう」 「陽和は覚悟があるんじゃなかったのか。」 「ああ。でも、今みたいな辛い思いばかりさせていれば、あいつはいつか我慢出来なくなって壊れる」 「···お前、何かしたのか」 「カラスに報酬を支払った」 「その報酬は何だったんだ」 「俺自身だよ。あいつがそれじゃねえとこれから先の仕事は引き受けねえってな」 「成る程な」 たった1回、それだけだった。 だから何ともないと思っていたのに、この様だ。 「晴臣」 「何」 「お前、頑張りすぎだ。何でもかんでも1人で考えて行動するな。」 「でも、俺は浅羽の若頭で···」 「少しくらいいいじゃねえか。組の事なんざ考えずに好きなように動いてみろよ」 親父が俺の頭をポンポンと撫でる。 そんなことされたのいつぶりだっけ? その衝撃で涙が勝手に溢れてくる。 「お前も疲れてるんだよ。最近色々あったからな。」 「···今日、このまま、ここにいていい?」 「ああ。」 そのままソファーに倒れ込む。 親父に見られないように服の袖で涙を拭いて目を閉じた。

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