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第166話
目を開けたら初めて見る部屋で眠っていて慌てて起き上がった。
どこだっけ、ここ。
眠っていたベッドから降りて部屋のドアに手をかけ外に出る。あ、思い出した。ここ、命さんとユキくんの家だ。
音を立てないようにゆっくり静かにリビングの方に出るとコーヒーを飲んでる命さんがいて、俺を見るなり「あ、おはようございます」と優しい笑顔を見せてくれる。
「あ、あの、俺···記憶なくてっ」
「ああ、大丈夫ですよ。何も変なこととかなかったし。あ、でも酒、すごく飲んでたんで、二日酔いとか大丈夫ですか?」
「大丈夫です···あの、本当ごめんなさい」
「いやいや、謝らないでください。そうだ、コーヒー飲みますか?」
「あ···はい。ありがとうございます。」
「座っててくださいね」
言われた通り、大人しく座っていると美味しそうないい匂いをしたコーヒーが目の前に出された。
「いい匂い···」
「でしょ。俺、コーヒー好きでちょっと拘ってて。ユキもこれなら飲めるんですよ」
「へぇ。なんか、そういうのいいなぁ···」
一口飲めば匂いだけでなく味もやっぱり美味しい。
心が落ち着いて、朝の1杯にはピッタリだ。
「今日もユキは暇みたいなんで、よかったら気分転換に2人でどこかに出かけてきますか?」
「え···でも、迷惑ばっかりかけてるから···」
「迷惑なんか思ってないですよ。あの···これ、言っていいのかわかんないんですけど、一応昨日の夜、若に連絡したんです。」
「え···」
「余計なお世話だってわかってるんですけど、どうしても我慢出来なくて。」
「我慢って···あ、やっぱり何か迷惑···」
「違いますよ。」
優しく笑った命さんの後ろでドアが開く。
そこからはまだ眠たそうなユキくんが現れた。
「命ぉ···おはよぉ、ございます···」
「ああ、おはよう」
「んー···いい匂いする。コーヒーと、命の匂い···」
「ユキ」
「命、おはよぉのチューは···?」
「陽和さんいるけど」
「ひよくん···ひよくんも、おはよぉ」
ユキくんが命さんの背中にべったりくっついて、ぐりぐりと額を押し付けてる。
「命、ちゅーしようよ、ねえ」
「はいはい」
「んー···っ」
目の前でユキくんと命さんがキスをする。
1回じゃ足りなかったようで舌を出して命さんの唇を舐めたユキくん。
「こら、もう終わり」
「···命の、お膝乗るの」
「いいのかよ、陽和さんにお前のその子供っぽいところ全部見られるぞ」
「···やだぁ」
「じゃあ我慢。ほら、こっちに座れ」
命さんの隣に座ったユキくんがへにゃりと笑って命さんの手をぎゅっぎゅっと楽しそうに握ってる。
「ユキ、コーヒー飲みたいんだけど」
「俺も飲むの」
「じゃあ入れてくるから、手離して」
「やだ。やっぱりお膝乗る」
ユキくんは命さんの膝に向き合う形で座った。
ユキくんの背中を撫でた命さんは申し訳なさそうな、でも少し嬉しそうな顔で「すみません、朝はいつもこんなんで···」と俺に言った。
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