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第170話
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「いつも、我慢ばっかりさせてごめん。辛い思いさせて、ごめん」
泣いている陽和と目を合わせてそれを伝える。
陽和はうんうんと頷いて俺の手に頬を擦り寄せてくる。
「でも、それ以上に、俺のためにって努力してくれて、ありがとう」
「···俺、ちゃんと、できてるのかなぁ」
「ああ。だって、お前がいないと多分、俺はずっと間違いに気付けなかったから」
「···ねえ、今度からは、全部言っていい?俺の、嫌だって思ったこと、ハルに言ってもいい···?」
「いいよ。我慢しないで教えて」
そう言えば陽和は俺に強く抱きついてきた。
そのまま離れられないように抱きしめ返すと涙に濡れた声で嫌なことを吐き出す。
「···は、ハルが、俺じゃない人に触るのは、嫌なの」
「ああ」
「仕事だってわかってるけど、忙しいのは知ってるけど、1人にはなりたくないし、ハルと離れるなんて考えたくもないっ」
「···ああ」
「もう···もうずっと、俺だけ見ててよ。俺も、ずっと、ハルだけ見てるから」
陽和の腕の力が強くなる。
「陽和」と小さく名前を呼べば顔を上げてくれる。
その顔は涙でぐちゃぐちゃだけど、愛おしくて堪らない。
「俺にはもう、お前しかいないよ」
そう言ってキスをすると嬉しそうに笑った陽和に、俺も笑顔を返した。
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