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第171話
「いやー!!本当によかったよ!!」
そう言って笑う鳥居は陽和と握手をしてる。
かと思えば俺のそばにやって来て「もう泣かせちゃダメですよー!!」と肩を叩かれた。
「············」
「何で返事しないんですか!!」
「いや、泣かせないって、それは約束できな─···」
「陽和くんダメだ!この男とは別れたほうがいいよ!!」
鳥居が慌てて陽和に寄り俺と別れろと言う。
「別れないです」
「また泣かされちゃうよ!」
「でも、それ以上に笑顔にしてくれるから」
陽和が俺に向かって笑顔を見せる。
可愛いその笑顔は自然と俺の心を軽くした。
「···なんか、俺、邪魔ですね」
「あ、鳥居さん本当にありがとうございました」
部屋から出ていこうとした鳥居に陽和が頭を下げる。鳥居は驚いて「そんなのいいから!」と陽和の頭を上げさせた。
「何かあったらいつでも言ってね。俺も話を聞くことくらいできるから!」
「ふふっ、ありがとうございます」
「うん!よーし!じゃあ俺は仕事してきまーす!」
今度こそ出て行った鳥居。
じゃあ俺も仕事するか、と小さく溜息を吐くと目の前に陽和がやってきて俺の手に触れる。
「何?どうした」
「···あの、今から仕事、だよね」
「ああ。お前は学校は?」
「今日はいいの。···ハル」
「何」
恥ずかしそうに視線を合わす陽和。
うるうるとした瞳に、頬は赤く染まっている。
ああ、わかった、陽和が言いたいこと。でも俺に仕事があるとわかって言えずにいる。
「何?教えて」
「···あ、の」
「うん」
「···あのね、後ででいいの。ハルに時間が出来たらでいいから···俺、ハルとエッチしたい…」
陽和が視線を逸らすから、陽和の手を掴み引き寄せる。
驚いて俺の胸に入ってくる陽和を抱きしめて顔を上げさせキスをした。
「仕事は後でにするか」
「あ、それはだめだよ···」
「いや、もう無理」
陽和に押されたスイッチは事を終えないと元に戻ることはないと思う。そっと陽和を抱き抱えてベッドに移動しゆっくり服を脱がせていく。
「あ!待って!俺昨日お風呂入ってないの!お願いだからお風呂入らせて!!」
「別にいいんだけど」
「良くないのっ、お願い!」
「···わかったよ」
陽和の上から退いて、急いで風呂に向かった陽和に、早く帰って来ねえかなぁって思いながら、口に咥えた煙草に火をつけた。
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