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第175話 晴臣side

昼からはいつも通り仕事をした。 陽和はベッドで眠っている。たまに「ハル」と名前を呼ばれて、ベッドに行けば柔らかい笑顔で「居たぁ」と言って俺の腰に抱きついてきたり、手を繋いでそのまままた眠ったりして、愛しく思う。 何度目か、目を開けた陽和にキスをして「おはよう」と声をかけた。 「まだ眠い?」 「眠い、けど···もう起きる」 「別に寝ててもいいけど」 「ハルの仕事してるところ、見てる」 「何だそれ」 ベッドから起き上がった陽和はソファーに座り、そこからデスクに座る俺を言っていた通り、ずっと眺めている。 「何してんの」 「あ、ごめん···」 「ごめんじゃなくて、どうした?」 「···あの、かっこいいなぁって、思って」 恥ずかしそうにそう言った陽和。 ついつい口角が上がって、多分今は気持ち悪い顔になっていると思う。片手で口元を押さえて仕事に集中しようとするけど、陽和の視線がそれを許してくれない。 「···陽和」 「何?」 「そんな、見られてちゃ出来ないんだけど」 「えっ、あ、ご、ごめん!」 こういう時、他の奴らならどうするんだろう。 早河なら仕事は後でするとして、琴音に構ってやるんだろう。 命はならあいつは間違いなくユキの方に行って甘やかせてやるんだろうな。 そして俺も、そうしてやりたいと思う。 椅子から腰を上げて陽和に近づいた。何?と向けてくる視線を無視して陽和の隣に座り、陽和の肩を抱いて引き寄せる。 「わ、ぁっ」 「何、寂しかったの、お前」 「···さみしかった」 「可愛いな」 陽和がもぞもぞ動いたかと思うとじっと俺を見つめてくる。 「何?」 「好き」 「·········」 「ハルのこと、好き。大好き」 そう言って強く抱きついてきて、俺の体はぐらりと揺れる。バランスを崩してソファーに倒れ込むと俺の上に乗ってきた陽和が何度もキスをしてきて、可愛いなぁと陽和の髪を撫でる。 もういっそ、簡単には離れられないように、お互いの左手の薬指にお互いを繋げた鎖をつけてやるのもいいかもしれない。 「指輪、買うか」 「え···?」 「指輪。ほら、お前と俺のここにつけるの。」 "ここ"と言って陽和の左手の薬指に触れると陽和がだんだんと顔を赤らめる。 「本気?」 「お前のことに関してはいつでもそうだけど」 「···う、ん。そうだね。ふふっ、うん。指輪、欲しい」 「じゃあ決まり」 ここで俺からかっこよくキスをしたかったのに、陽和がすごくエロい表情でキスをしてきたから、何だか少し負けた気分と、達成感に似た感情に包まれた。

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