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第176話
その日の夕方、久しぶりに2人きりで買い物に出かけた。
人目も気にせずに手を繋いだり、我慢出来ずに裏道に連れていきこっそりキスしたり。
こんなの、高校生の頃以来ですごく新鮮な気持ちだ。
「あ!ねえハル!あれ、琴音くん!」
「あ?そうだな。」
「会いに行こうよ!琴音くーん!!」
陽和が名前を呼び手を振ると琴音はすぐに気付いて、手を振り返してくる。琴音の他にも4人の男がいて、それぞれなんとなく見た事のある顔だなぁ。と高校の時を思い出す。
「陽和くんにハル!デート?」
「うん!」
近づいてきた琴音の言葉に何の躊躇いもなく"うん"と言い切った陽和。琴音の後ろにいる4人は俺をチラチラと盗むように見てくるからちょっと気分が悪い。
「こいつら覚えてる?高校の時、俺と同じ学校やった···」
「覚えてるよ!でも、名前は知らなくて···教えてくれないかなぁ」
陽和があざとさをたっぷりにそれぞれと目を合わせる。
俺は自然と眉が寄り、それを見た琴音は困ったように笑って「えっとなぁ」とそれぞれを紹介してくれた。
「こいつがアイで、こっちがアメ。ほんでこれがハチで最後が隼人」
「俺は陽和です。こっちはハル···晴臣!」
「よろしく」
呟くようにそう言えばそいつら4人は「知ってるよ。浅羽だろ?」と小さく笑う。
「昔から有名人じゃん、お前」
「高校で同盟組むってなった時、焦ったもん。」
「滅茶苦茶怖い、とか、聞いてたし」
「···でもそんなこと無かったな」
「ハルは全然怖ないで。大和に休み頂戴言うたらくれたし、この間も刺されてたけど叩いても怒らんかったし」
「叩いたの!?」
それぞれが話し出して、しかも内容が俺が怖くないとかそういう話だから、どういう反応をすればいいのかわからなくなる。
「ハル、顔が怖いよ」
「悪い」
表情が険しくなっていたみたいで、陽和に頬を触られるとそれが緩む。
「ほら、恋人にはあんなに甘いし」
「···うるせえよ、琴音」
「困った時はすぐ助けに来てくれるし、陽和くんもそういう所にメロメロなんやろ?」
「め、メロメロ···う、うん。ハルは優しいから」
陽和が恥ずかしそうに俺に視線を合わせてにこりと笑う。俺も自然と笑顔になって陽和を抱き寄せてキスをしようとすると「人前だから!」と突っぱねられた。
「お前らどっか行けよ。出来なかっただろうが」
「ちゃうやろ。家でやれって話や」
「はあ?陽和が誘ってきたらするだろうが」
「誘ってない!!」
「···見ての通り、アホやしな」
琴音の言葉に俺以外が全員頷く。
何だよ、陽和まで頷いてんじゃねえよ。
「じゃあ、俺ら行くから」
「あ、またね!」
陽和の手を引っ張ってズンズンと前に進んだ。
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