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第178話
指輪を買うため、専門の店に入る。
「ハル、これ、これ綺麗だよ」
指輪を見ながら陽和は嬉しそうな声を上げた。
「そうだな」
「わぁ、メッセージ入れられるんだって!凄いねぇ」
店員さんはそんな陽和の様子を優しい笑顔で見ている。どうやらここは同性愛のサポートをする店らしく、俺たちに対して嫌な顔はしない。
メッセージを入れたいなら、こういうのもありますよって提案をしてくれたり、どうやら陽和はすごく満足らしい。
「これ、お前に似合いそう」
「どれ?」
「これ」
「本当?嬉しいなぁ。あ!これならハルもシンプルでつけやすい?」
「そうだな」
「ふふっ、じゃあこれにする?」
陽和が俺の手を握る。
顔を覗いてきて可愛いなと空いていた手で頬を撫でれば「擽ったいよ」と笑う。
「で、どうする?」
「陽和はそれでいいのか?」
「うん!だってハルが似合うって言ってくれたもん」
「···じゃあ、それで。」
シンプルで陽和に似合いそうな指輪に決めた。それにはメッセージを入れるというのは無くて、それでもいいと陽和は言う。
店員さんは柔らかく笑って「では、こちらで」と言って一度紙を用意するとかでどこかに行く。それを狙って立ち上がった。
「悪い、ちょっとトイレ」
「うん、いってらっしゃい」
陽和を置いてさっきの店員さんを追いかける。
「あの────」
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