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第186話
その日、学校から直接、裕也をつれてハルの家に帰った。
浅羽組の敷地内に入ると命さんと早河さんが何かを話していて、俺を見て「おかえりなさい」と頭を下げる。そんなの俺にはいらないのに。
「その人は?」
「あ、ハルに用があって···」
「若なら今は親父のところにいるんで、呼んできます。」
「すみません」
早河さんがハルのお父さんの所に向かって、命さんは「仲直りできたみたいでよかったです」とこっそりと俺の耳元で言う。
「命さんのおかげですよ」
「そんなことないですよ」
くすりと笑った命さんは、突然携帯電話を出して、電話がかかってきたのか耳に当て「何だ」と言う。
「ああ、わかった。」
すぐに電話は切れて、命さんが俺に向きなおる。
「部屋、いつもと違うところ使うらしいんで、案内します」
「ありがとうございます」
命さんに案内されて裕也とついていく。
ついた部屋は来たことのない部屋で、そこに入るともうハルがいた。
「命、ありがとな」
「いえ、それでは失礼します」
命さんが下がっていって、部屋の中には俺とハルと裕也だけになる。
「···本当に金、くれるんだろうな」
「ああ。そういう条件だからな」
ハルに怯むこともない裕也はどかっと座って「で?何、話すことなんてねえんだけど」と言った。
「お前の親父さんのことだ。──···本当に、悪かった。」
「っ!」
ハルが祐也の目の前で土下座をした。
驚いて目を見張る俺とは違い、裕也は蔑むような目でハルを見下ろす。
「それだけで、許されると思ってんのかよ···」
「思ってない。」
「じゃあそんなことするな、無駄だ。」
「ああ。ただの俺の自己満足だよ。お前に刺されたことなんてどうでもいいんだ。俺たちには怒る資格すらない。ただ、せめて謝りたかった」
「···くだらねえ。」
舌打ちを零した裕也は「もう話は終わりか?」と鼻で笑う。
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