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第189話
裕也を送っていった、帰りの車内。
ハルが隣に座って煙草を吸っている。運転をしてくれてるのは鳥居さんで「甘いもの食べたーい!」とハルにチラチラ視線を投げている。
「わーか!甘いの食べたいです!」
「好きな店、入れば」
「やったー!」
ハルの太股に手を置いて顔をぐいっと近づける。
煙草を俺からパッと遠くに離して「危ねぇだろ」とちょっと怒られた。
「さっきの、話し合い、上手くいったと思う?」
「···まあ、俺の予想よりは。」
「俺、余計なこと言っちゃったかな」
「いや、そんなことねえよ」
煙草の火を消したハルはハルの太股に置いていた俺の手に触れる。
「まあ、とりあえず、一件落着だな」
「うん。···あ、違う!ねえハル!ずっと言いたかったことがあるんだけど」
「何だよ」
ずっと言いたかった、でも言えなかったこと。
今なら言えるかも!と勇気を振り絞る。
「浮気した相手、カラスさん?」
「今それを聞くか!?」
「聞く!それで、今度カラスさんに会った時殴ってやるんだ!」
「落ち着けよ!おい鳥居!まだ店につかねえのかよ!な?陽和、落ち着いて甘いものを食おう、そしたら···い、痛い痛い!」
ハルが手でヨシヨシと宥めようとしてきたから、イラッとしてその手に噛み付いた。
「痛ぇよ!」
「今度浮気したら、これ噛みちぎってやる」
「···それはさすがの俺も死ぬぞ」
これ、と言いながらハルの股間に触れると顔をさっと青くした。何故かミラーに映る鳥居さんの顔色も青い。
「陽和くーん、二次被害が起きてるから、その話は若と二人きりの時にしていただいても···」
「鳥居さん!」
「はい!」
「甘いもの、いっぱい食べましょ!ハルが奢ってくれるから!」
「えー!やったー!」
ハルが隣で大きな溜息を吐いた。
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