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第190話

「陽和くん!これ美味しいよ!食べてみて!」 「え!いいんですか!いただきまーす!」 陽和と鳥居が目の前で楽しそうに食べているのを、珈琲を飲みながらぼーっと見ていた。 とりあえずそれぞれの事に終止符を打ててよかった。とか、本当、疲れたなぁとか、色んな思いが出てきて体の力が抜ける。 明日からはもっとちゃんと仕事をしないと。と中野裕也を思い出して、そう思った。 「ハル、はい、あーん」 「···················」 「これ美味しいから、食べてみてよ」 「···今腹減ってね──んっ!」 「どう?美味しいでしょ?」 陽和に無理矢理食わされたイチゴとバナナのパフェ。 甘くて美味い。素直に頷けば「よかった!」と笑顔を向けられる。 「ちょっとぉ、あーんとかぁ!俺だってしてほしいしぃ!」 「じゃあ、はい!鳥居さん、あーん」 「あー···っ、いてぇ!」 陽和からの"あーん"で食べようとした鳥居の額をバシッと叩く。 「お前は恋人にやってもらえ」 「えぇー!俺と陽和くんって結構仲良しなんですよ?俺は陽和くんを恋人って言ってもいいくらい!」 「···陽和は俺のだ。おい、抱き寄せてんじゃねえよ」 鳥居が泣き真似をしながら陽和に甘えようとするから今度こそ強めに鳥居を叩くと反省して「わかりましたよ、恋人ね、ちゃんと作りますよ」と唇を尖らせて、デザートの続きを食べる。 「ハル、いいじゃんか。俺なんかのこと好きでいてくれるんだよ?」 「お前は"俺なんか"じゃねえの。いい加減ちゃんと自覚しろ。お前は俺の恋人なの」 「···それ、自分で言ってて恥ずかしくないの?」 「そんなこと全くねえな」 眠たくなって欠伸を零す。 ああ、眠たい。

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