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第192話

いつも通り、親父と陽和と組員たちと一緒に飯を食う。 初めこそ怯えていた陽和だったけれど、今じゃそんな事はなくて、むしろこの場所を楽しんでるようにすら思える。 「わあ、これ美味しい!」 陽和がそう言うとすぐに鳥居が反応して「それ、葉月が作ったんだよ!」と一人の組員を指差す。 「葉月さん、料理上手いんですね!!すごい!!」 「やったー!ありがとうございます」 うちの組では組員は必ず、それぞれ決められた幹部の下につくことになっている。早河の班だったり、命の班だったり、幹部それぞれをリーダーとして動く。 葉月は命の部下で多少の天然が入っている。 その上馬鹿正直だから、命もたまに葉月の事で溜息を吐いている。 「俺もこれ、作れるようになりたい!葉月さん!教えてください!」 「いいですよー!やった、俺、陽和さんとお近づきになれるかも···」 葉月の言葉が聞こえてきて舌打ちをすると陽和が笑って「舌打ち、嫌」と言ってきた。 「···悪い」 「ねえこれ、これ食べてみてよ、美味しいから」 「食べてるよ。美味いな」 「ね!すごいよね!」 陽和がここに来るまでワイワイと良い意味でうるさくはなかったこの場所が今では違う。 組員がクスクスと笑っていたり、楽しそうに会話をしたり、緊張感がそこには微塵もなくて、こんな時間があってもいいんだなと、感じる。 組員達の前では当たり前のように殺してないといけないと思っていた感情はここには存在していて、それを親父も誰も、咎めようとはしないから。 「ハル、どうしたの?」 「いや、何でもない」 こういう事に気付かされて、また、陽和が好きになる。

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