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第203話
ギリギリの時間に起きて、ハルと鳥居さんが車で学校まで送ってくれる。
隣に座るハルは今にも寝てしまいそうだ。
「ハル、寝ないでよ」
「んー···」
「ハルー!」
「起きてるって。何?甘えたいのか?」
俺の頬にキスをして、それから唇に。
鳥居さんがいるのに…なんて思いながらも拒否をしないんだから俺も甘くなったなぁって思う。
「ちょっとぉ、見せつけてくれますねぇ」
「あ?見てんじゃねえよ」
「え、ここでしてるくせにそんなこと言う!?」
ハルの理不尽な物言いに流石の鳥居さんも反発していた。
「着きましたよー!陽和くん、頑張ってね、いってらっしゃい!」
「ありがとうございます!ハルも、いってきます」
「おう。いってらっしゃい」
ハルがまたもう一度俺にキスをしてきたから、俺からもキスをプレゼントして車から降りる。
薬指に輝く指輪に軽く触れる。
冷たい金属のはずなのに、すごく暖かい気がした。
「────おい!」
「っうわ!」
後ろから突然背中を押された。驚く俺をよそに、口角を上げてニヤニヤと笑う龍樹くんが何かを話してくるけど聞く気もなくて「へー」だの「そう」だの適当に相槌を打つ。
「聞いてねえな」
「うん」
「···話がある、昼飯外に食いに行くぞ」
「うん。奢ってね」
そう言うと嫌そうな顔をして「お前いつもうまい飯食ってんだろ」と言われた。
「うん。組員さんたちが当番で作ってくれるんだけどね、すごく美味しいよ」
「俺はその作る側なんだよ。まだ修行中だ」
「そうなんだ。俺も今度手伝ってみようかな」
「喜ぶんじゃね」
「そっかぁ」
葉月さん達が喜んでくれるのは嬉しい。
ところで、龍樹くんは俺に何の話があるんだろう。
「昼休みここにいてくれ」
「うん」
今日は別々の授業を受ける。
龍樹くんと別れて一人で廊下を歩いた。
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