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第4話
相手はただのお客で、普通にシャンプーをすればいいだけだったはずだ。
そもそも何で男に欲情したのが、自分でも分からない。ただ、ジッと彼に見られていたから、からかってやろうとしただけなのに。
耳たぶを少し触ったら、分かりやすいほど彼は身体が震えていた。何度も触ってるうちに彼は拳を握っていた。
こんな格好で触られたら、反応するに決まってる。
(面白いな)
自分にSっ気があるのは重々分かっている。だからもっとやってみたいと思った。彼はこの行為が、早く終わって欲しいと思ってるだろう。
ガーゼで隠れてるから、赤面した顔を見られなくて助かったと思ってるだろうけど…
あえてガーゼを外して、彼の顔を覗き込んだ。案の定、真っ赤になっていた。そしてうっすらと目尻が濡れていた。
(そんなに感じる…?)
たがが耳たぶと首筋を触ってただけだ。それなのにそんなに感じるなんて。そのとき、確かにゾクっとした。
(…この先も見てみたい)
驚いた顔をしている彼に、率直に聞いてみた。
「気持ちいいとこ、ありますか?」
***
小山と通話して数分後。誠の部屋のチャイムが鳴った。どこまで正確に個人情報を盗みやがったんだよ、と誠は毒づきながら玄関のドアを開けた。
「こんばんは」
今朝、知ったばかりの銀髪の男がそこに立っていた。これから彼とセックスするのだ。改めて気づいて、誠は顔が熱くなる。
「…入れてくれる?」
立ちっぱなしで待っていた小山にそう言われて、誠は慌てて部屋の中に誘った。部屋に入りながら、誠に気づかれないように小山は笑う。
ソファーに座るように促して誠は台所へ。
「飯食ったの?」
そう聞かれた小山は、キョトンとしている。
「仕事帰りなんだろ。飯は」
改めて誠が聞くと、小山が答えた。
「夜は、いつも食べないから」
「はぁ?よく体持つな」
「朝、ガッツリ食べるから大丈夫。コーヒーだけ、貰えたら嬉しい」
そんなだから華奢なんだな、と誠はぶつぶつ言う。ケトルで湯を沸かしながら、コーヒーの準備をする。
湯が沸くまでの時間、二人は無言だった。
(気まずいな)
そう誠が思ってると、小山が台所に来た。
「白河さん」
「まだ沸いてねぇよ、あっちで待っとけ」
背後にいる小山に背中越しに声をかける。すると、後ろから小山に抱きつかれた。
「な…、おい!」
「あんた、今から俺たち何するか分かってる?」
耳元で囁かれて、誠はゾクリとした。
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