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第11話

(そうか、もういないんだ) 肩の力が抜けて、ホッとした自分がいた。これで【Green】に遠慮せず来れる。あんな悪戯も受けなくて済む。 だけど…、やっぱりどこかでガッカリしている自分がいた。しかも昨日だなんて。 1日早ければ…、と一瞬でも思ってしまった自分に首を振る。 藤川と一緒にレジの方へと移動し、精算をしようとした時、藤川が他のスタッフに呼ばれたので精算は友永がしてくれた。 「またお待ちしています。今度は早めに来て下さいね」 はにかむ友永に誠も笑った。外に出ると、サアサアと雨が降っていた。 「傘、ありますか?」 「ああ、持って来てたから大丈夫。ありがとう。藤川さんによろしく」 店を出て、雨の中を傘をさして歩く。少しだけひんやりした空気が誠を包んだ。 一人になると、どうしても思ってしまうのは小山のことだ。 あの日貰った携帯番号は登録していないし、メモも捨てた。だけど発信履歴を探せばわかるかもしれない。 連絡ができないわけではないのだ。だけどそこまでして、自分はどうしたい? それに小山からも連絡がない。それこそ、自分のことを何とも思っていない証拠だ。 (何がしたいんだ、俺) その時、パシャパシャと雨の中を走ってくる足音が聞こえた、 「白河さん!」 振り向くと、藤川が傘もささずに走って寄って来た。 「藤川さん、どうしたんですか、濡れちゃいますよ」 「これ、帰りにお渡ししようとして、渡せなかったんで…」 手にした白い小さな封筒を藤川は、誠へ差し出した。 「小山くんからです。白河さんが見えられたら、渡して欲しいって言われてたので」 「え…」 藤川は確かにお渡ししましたからね、と一言告げるとそのまま来た道を戻っていった。 誠はその場に立ち尽くして、藤川が手渡ししてくれた封筒を開けてみた。中に入っていたのはメモ用紙が一枚。 『白河さんが嫌でなければもう一度連絡をください』 その言葉の後ろには、携帯電話の番号がもう一度、明記されていた。

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