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第12話
五コールで、小山は電話に出た。
『もしもし』
その声を聞いて、誠は我に返る。本当に電話してよかったのだろうか。気まぐれで書いただけのメモを、本気にして。
小山はかえって呆れているんじゃないだろうか、とか。そんな事を思っていると言葉が出なかった。
『…白河さんですよね』
「…あ」
少しだけ、柔らかいトーンになった声に、誠がようやく声を出した。
『連絡していただけた、ということは【Green】に行かれたんですね。藤川さんに聞かれましたか?』
「ああ。辞めたんだってな」
『そうなんです。僕はあそこに居たかったんですけどね』
「そう」
『あそこに居て白河さんを待ってたかった』
「…何で」
『決まってるじゃないですか』
ゴクリと、喉がなる。
『もう一度、触れたかったから』
ゾクリとした。
「…もう会えないだろ」
『会いたいですか…ああ、違う』
『会ってくれますか』
***
指定されたシティホテルの部屋の前まで来て、誠は一瞬チャイムを押すのを躊躇した。
多分、ドアを開ければ自分が抑えられないことは分かっている。それでも自分は…
(アイツに会いたいんだ)
チャイムを押すと、中からトアが開く。その先にいたのは…
真っ黒な髪になった、小山だった。誠が驚いて立ちすくんでいると、小山は入ってと促した。
パタン、とドアが閉じたのと同時に小山の手が、誠の身体を引き寄せて抱きしめられた。
そして間髪入れずに、小山がキスをして来た。
「ん、んっ!」
誠は驚いて小山の体を叩くが気にもせずに小山はなおもキスをする。誠の顎を持ち、口を開けと言わんばかりに上げる。
口を開けると、荒々しく舌が口内に侵入して来た。
「んあッ…」
絡んでくる舌に答えていくうちに、誠の力が抜けてくる。抵抗していた手も止まり、行き場を失っていた。その腕を小山が手に取り、自分の背中へ誘導した。抱き着けということだろうか。誠はもう、抗わずにそのまま小山の身体を抱きしめる。
何分、そうやって深い深いキスを重ねただろうか。ようやく唇が離れたときには、立っていられないほど、誠は体が熱くなっていた。
「すみません、我慢できなくて」
ベッドに腰かけた誠の顔を見ながら、小山がそう言う。すみませんなんて初めて聞くな、と誠は言いながら笑った。
「髪、黒くしたんだな」
冷蔵庫からミネラルウォーターを2本取り出した小山が1本を渡す。
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