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第17話
小山が今日も誠の頭を風呂場で洗っていた。人にシャンプーしてもらうのは、何でこんなに気持ちいいんだろう。それが元美容師の恋人なら、尚更だ。
こういう仲になって、三か月。小山は暇を見つけては誠の部屋を訪れていた。
家業を継ぐから、と美容師を辞め一時、誠の前から姿を消していた小山だが蓋を開けてみると実家は近所で車で通えるほどだ。
週に三回くらい、多い時は五回くらいは誠の家に夕方から入り浸る。
初めは誠の仕事が終わる時間を狙ってきていたのだが、段々と早く来ては『まだ帰らないの』と仕事中の誠にメール攻撃してきた。
流石に続けて早く帰る訳にもいかず、誠は渋々、小山に部屋のスペアキーを渡した。
『ホラ、鍵、渡しとく。仕事中にあんまりメールしてくるなよ』
そう言いながら渡した時の、小山のニヤッとした笑い顔を誠は今でも忘れられない。
『素直にくれてたら、メール攻撃しなかったのに。ありがとね』
はぁ?と口をパクパクさせる誠。小山はすぐその鍵を自分のキーケースに納めた。
そんなこんなで先週。
深夜のベッドの中で二人、コトの後でまったりしていたら、小山が思い出したかのように言い出しだ。
「ねぇ、誠さん。荷物、持ってきても良い?」
「ん?歯ブラシとか、おまえ勝手に置いてるじゃないか」
気怠そうに誠が答えると、小山が少し笑う。
「だーかーら、前にも言ったでしょ。ここに転がり込んでいいかってことだよ。前、風呂場で荷物持って来ていいって言ってたのに、OKしてくれたの、歯ブラシとパジャマだけだったでしょ」
そういうと誠の額にキスをする。ぼーっとしていた誠は、がばっと体を起こす。
「お前、本気で一緒に住む気かよ」
「なんで?もう合鍵までもらってるじゃん」
小山は横になったまま、誠の腰に抱きつく。
「そりゃそうだけど…」
行きつけの美容室で初めて会って、その後、三回しかあってないなくてお互い素性もよくわからないのに付き合い始めた。
その後は順調とはいえまだ三ヶ月過ぎぐらいしか付き合っていないのだ。
確かに一度、風呂場で荷物を持って来ていいかと聞かれ、誠は頷いたが実際には一緒には住んでいない。
セフレなわけじゃない、でもまだ自信はない。
あまりにも色んなことが早く進み過ぎて、誠はだんだんと不安になってきた。
胸の奥がモヤモヤするのは小山との密会がこの部屋だけだからだろうか。
仕事から帰ったら、小山が来ていて夕飯を作っていてくれて。
一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、ゆっくりして。
お互い、その気になれば愛し合って。今の所それがなかったことがないのだが。
小山が普段どんな生活をしているのか、どんな趣味があるのか。
何が好きなのか、何が嫌いなのか。
全く知らない、ということが誠の不安を掻き立てる。
(女の子じゃあるまいし…)
「誠さん?」
黙ってしまった誠を不思議そうに見上げた小山。いつもなら落ち着いた顔をしているのにベッドでこうして甘えているときは酷く可愛らしく見える。
誠は小山の頭をポンポンと叩いた。
「一緒に住むのは、もうちょっとあとな」
えー、と小山が不満そうな顔をするがそれでも誠は拒否する。
「もお、頑固なんだから…」
小さなため息をついて、小山は降参した。
腰に抱きついていたその腕をソロソロと伸ばし、内股をさする。
「ちょ、さっきやったばっかだろ」
「いいじゃん、明日も休みでしょ」
そういうと小山は誠の腰のあたりから臍のあたりを舐め回し始めた。やがて内股を彷徨っていた手が誠のソレにたどり着いてゆっくりと触れる。
「あ…」
さっき果てたばかりのソレは始めこそ柔らかかったものの、あっという間に硬さを帯びる。強弱をつけてソレを愛撫する小山の頭を誠はいつの間にか、掴んでいた。
「誠さん、痛い」
「あっ、ごめん!」
パッと離すと小山はかけていた布団をめくり、露わになった誠のソレを口に含む。こうなるともう誠は小山の言いなりだ。
「んっ、ああ…、あ…」
「こんなに甘えてくるのに、何で一緒にいてくれないのかなあ」
小さく呟いた小山の言葉は、誠には届かなかった。
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