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49.予定がかわることもある
岡は本当に俺に入れなかった。
安田がイッてコンドームを替え、またずぶずぶと犯された。岡は俺の乳首をいじったり、安田の入っている尻穴の入口を散々指先でなぞったりしたが、俺が「岡も……」と誘っても柔らかく笑むだけだった。
寝起きも安田のイチモツでぐりぐりと奥を犯される快感によってだった。
「締まらなくなりそう……」
尻穴を犯されるのがたまらなく気持ちいい。奥の奥を抉られる快感で身体がぐずぐずに蕩けてしまいそうだった。
「ちゃんと責任取りますから」
岡が楽しそうに言いながらちゅ、ちゅと額に、頬に口付けをする。俺を貫いているのは他の男なのに、俺の痴態を嬉しそうに眺めているのがなんだかなぁとは思った。でも俺だって岡と安田のイチモツを受け入れてあんあん言ってるんだから今更である。
安田は水曜日が休みなのでそのまま片付け等をして適当に帰るようだ。俺と岡はそのまま出勤し、岡の家に泊まることになっている。すでに半同棲のような状態に俺は眉を寄せた。
昼頃親からLINEが入った。叔父が話したがっているから電話するようにとの連絡だった。叔父は今の物件を貸してくれている親戚である。今は九州の方に単身赴任しているが戻ってくることになったのだろうか。
(もしかして、いい借り手がついた、とか?)
その可能性もないではない。考えてもしかたないので仕事が終わってからかけることにした。
「先輩、何かあったんですか?」
だがそれで動揺しているのを岡にはすぐ気づかれてしまった。
「んー、いや。叔父に電話しろって連絡があってさ」
「叔父さん、ですか?」
「今住んでるところの家主なんだよ」
「ああ、それで。何かありました?」
「わからないんだ。あとで電話することになってる」
岡は少し考えるような顔をした。
「じゃあ、一度先輩の家に行きましょうか。なんともなければそのままうちに来てもいいですし」
安田さんも一緒にいた方がいいですよね、と岡がさっさと連絡してしまう。なんだかやけに手際がいいなと首を傾げたが、俺はそれほど頭がよくないので気のせいかとすぐ流してしまった。
「でも……どうという話でもないかもしれないぞ」
「それならそれでいいじゃないですか。……そんな不安そうな顔、ほっとけないですよ」
「…………」
小声でそんなことを言われて、俺は赤くなった。思ったよりも動揺していたようだった。
残業などしているヒマはない為集中して仕事を終わらせる。追加で何か頼まれそうになったが今日は無視して会社を出た。その少し後ろを岡がついてくる。
途中飲み物とスナック菓子を買って帰宅した。
「お帰り~」
安田がいた。
家で誰かが待っているというのはなかなか新鮮だ。俺は緩む頬を押さえきれず、差し出された手にジャケットを預けた。
「アナター、ごはんにする? お風呂にする? それとア・タ・シィ~? ってっ!」
腰をかがめてそんなことを言うのでデコピンしておいた。
「電話だ電話」
「お邪魔します」
「いてー。手ぇ洗えよー」
どっちが家主なんだかわからない。
とりあえずスエットに着替えてテーブルの準備をしてから俺はスマホを取り出した。
いったいなんの話だろう。家賃の値上げぐらいならいいんだが。
RRRR RRRR RRRR………
『もしもし?』
「もしもし。叔父さん、智文です」
『ああ、智文か。電話させてしまってすまないな』
久しぶりに聞いた叔父の声は老けているように聞こえた。
「かけるように言われたのですが、何かありましたか?」
『ああ、それなんだが……』
叔父はとても言いにくそうにことの次第を告げた。
単身赴任先の上司の息子が東京の大学に推薦で入ることになったらしい。とてもめでたい話である。
これから物件を探すことになるが、いい物件はないかと上司に聞かれたという。
そこまで聞けば叔父の言いたいことはわかる。
「部屋は何月までに空ければいいですか?」
『……いいのか?』
「元々破格な家賃で住まわせていただいていたんです。今すぐというのでなければどこか探しますよ。今まで本当にありがとうございました」
『……すまない。ただ、もしも息子さんが気に入らなければそのまま住んでいてくれてかまわないから』
「見学に来られるんですね? いつ頃ですか?」
『詳しく聞いてからまた連絡する。智文、ありがとうな』
「いえ、気にしないでください。また」
これからのやりとりはメールになるだろう。それまで音を立てないでいてくれた岡と安田に感謝する。
「智、立ち退きか?」
「先輩、うちに来てください!」
立ち退きとは人聞きの悪い。岡の目がきらきらしている。大学の途中からだから、もう六年近くも住んでいた我家を出て行かなければいけないのはちょっとショックだが、岡と安田に救われた。
「まだ決まってないし」
気の早い二人に苦笑する。
それから俺たちは荷物を持って家を出、夕飯を外で食べてから岡の家になだれ込んだ。
この先どうなるかわからないけど、今は二人が側にいてくれることがとてもありがたかった。
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