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大掃除をしてみたら 前編
「埃ってどっからくるんだろうなー」
「こんなに埃がたまっていたとは……」
安田の能天気な疑問の声に、俺はくずおれた。
年末が近い。次の週末に叔父さんの会社の上司の息子(赤の他人)がうちを見にくると聞いていたので、岡と安田を動員して大掃除をしているのだ。
当初はこんなにいろんなところを掃除する必要はないと思っていたが、岡のチェックによりうちは埃の巣であることが判明した。
台所は一見キレイだが使わないところには埃が積もっていたし、どの部屋も同様である。見ただけでどこでどう生活しているのかわかるというかんじだったようだ。
「じゃあ、けっこう気になってたんじゃ……?」
おそるおそる岡に聞くと、
「さすがにここはってところは掃除してましたよ? 先輩がお尻洗ってる間に」
「ううう……」
面目ない。
「尻の穴の中はキレイでも、ってヤツだな!」
安田にばしばしと叩かれながらそんな身もふたもないことを言われた。気づかなかったお前も同罪だ。
そんなわけで俺たちははたきと雑巾で家の埃を駆逐しはじめたのだった。
「もう見たくない……」
埃の山を退治して、俺はぐったりとテーブルに突っ伏していた。
「大分キレイになりましたね。先輩の荷物はそれほど多くないから片付けは必要ないかもしれませんけど、押入れの中もチェックしておきましょうか」
「え」
さすがにそれは困る。押入れにはグラビアとかアナニーグッズが入っているのだ。
「じゃあ押入れ開けるぞー」
「ちょっ、安田、待てっ!」
寝室の方にいた安田が、制止の声を待たずにガラッと押入れを開けた。
「あああああ……」
俺は頭を抱えた。
「ん? お、洋モノじゃん。無修正いいよなー。この箱は?」
最近は全くお世話になってはいなかったが、洋モノのグラビアも買ってある。安田が言った通り無修正である。なんで日本ってあんなに修正するんだろうな? まんまでいーじゃん。
「安田、勝手に開けるな!」
「……おー、これは……」
「安田さん、何かいいものありました?」
岡が何やら楽しそうに食いついた。ホントやめてほしい。
「やめろっての……」
いやいやながら寝室に向かうと、案の定安田は俺のアナニーグッズを物色していた。
「エネマグラかー。使ってみようぜ」
「えー、もうこんなんじゃイケないと思うけど……」
もうこんなおもちゃじゃなくて二人ので掘られた方が気持ちいいし。
「アナルビーズもあるんですね」
「岡ぁ……」
安田と岡が興味深そうに段ボールの中身を覗いている。もう本当にいたたまれなかった。だって、気持ちいいって知ったらさぁ。ねぇ?(誰に同意を求めているのか)
「掃除、がんばりましょう! 終ったらこのおもちゃで先輩を可愛がりましょうね」
「え」
「そうだな! いやあ智がどんな風に乱れるのか楽しみだ!」
まるで掃除を急いで終えたらご褒美がもらえるような表情をしないでほしい。そのご褒美って俺だし。
埃は駆逐したので後は早かった。台所はろくに使っていないからそんなに汚れていないし、風呂も尻の中を洗浄するからと俺にしては珍しく掃除はしている。トイレも同様だ。物に執着がそれほどないからコレクターアイテムのような物も特にないので、掃除機をかけて整理整頓したら大掃除が終ってしまった。
岡がご飯を用意してくれる。
なんとできた男だろう。これでゲイじゃなかったら引く手数多だったに違いない。
「よくこの何もない家で作れるよな~」
安田の言葉に俺もうんうんとう頷いた。
「パスタなんてレンジ調理器があればできるじゃないですか。一応フライパンがありますからそれでパスタソースにニンニクを加えただけですし。サラダは袋野菜でスープはインスタントですよ。作ったうちに入りません」
「主婦みたいだな」
「主婦に怒られますよ?」
超手抜きだなんだ言われてもおいしければいいと思う。サラダの野菜は確かに袋から出しただけだがドレッシングは手作りだし、スープはインスタントと言いながらチーズを追加したりしているのを俺は知っている。本当に俺にはもったいない奴だと思うが誰にもやらないと今では思う。
「何にまにましてるんだよ」
「いや、俺愛されてるなーと思って」
安田に咎められたことにしれっとそう返すと、何故か二人が一瞬固まった。
あれ? もしかして俺間違った?
「何言ってるんですか、先輩……愛してるなんて言葉じゃ足りませんよ!」
「言葉なんかじゃ伝えられねえ! 智、ヤるぞ! 俺の愛を受け止めやがれ!」
「……うん、ありがとう。ごはん終ってからでオネガイシマス……」
超鼻息の荒い二人に迫られたが、食後すぐとか勘弁してほしいし、中は洗わないといけないのでどうにか止めた。
「くそっ! 智覚悟しろよ!」
「メス穴を責めまくるのもいいですが乳首の開発も続けないとですね……」
俺、やっぱ早まったかな?
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