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ハグとキス 6

「彼女とかじゃねぇから」  わざとらしい言い方をしたと、口に出してから後悔する。  ちびこい女、綾香ミツルは、目が合うと再びニコリと微笑んだ。  別れの挨拶もそこそこに三人と別れ、京香を連れて大通りまで出た時だった。 「省吾、ごめんなさい」  謝罪の言葉に、思わず立ち止まる。 「何でお前が謝んの。関係ねぇよ」  振り向くと、京香の瞳が潤んでいた。 「な……」  声をかける間もなく、京香はボロボロと涙を零した。 「おまっ、こんなとこで泣くなってマジで」 「絶対迷惑だってわかってたのに、無理矢理押しかけて私……でも……」  ヒックとしゃくりあげて泣く京香の肩を慌てて抱き寄せ、何でこうなるんだと天を仰いだ。道行く人々はチラチラとこっちを見ながら通り過ぎて行く。勘弁してほしい。泣かれたらどうしようもない。こういうのは苦手なんだ、対応に困る。  そのとき、鼻先にポツリと雫が落ちた。 「げ、雨」  雨粒は次第に数を増し、あっという間に音を立てて降り始めた。  濡れはじめた京香の身体を庇うように抱き寄せたまま、俺は細い脇道へ足を向けた。  途中でポケットのスマホに着信が入ったけれど、無視して歩き続けた。

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