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夏迷路 2

 向日葵ってこんなに大きかったっけ。  背の低いものもあれば、自分の背丈よりも高いものもある。花もでっかいやつは俺の顔くらいあるし、なんていうか奇妙。  向日葵だらけの黄色い世界は、非日常な空間だ。俺はのんびりと眺めながら、右へ左へと適当に進んでいく。  向日葵に覆われているせいか、人の声が聞こえない。  いや、さっきから誰ともすれ違っていない辺り、観光客がいないのか。 「あれ、行き止まりだ」  気のせいじゃなければ、同じ場所をグルグル回っている気がする。  空を見上げても太陽は真上だし、そういや俺って方向音痴なんだっけ。  たかが迷路と馬鹿にした俺が間違っていた。  まずい。  高台に辿り着けそうもない。 「暑い……」  額の汗を拭い、ひとりごちる。  大人しくハルに付き合っておけば良かったか。 ◇◇ 「……マジか」  完全にナメていた。この迷路、でけぇ。  入口からは見えていた高台も今は何処にあるのやら、見えやしねぇ。  時計を見ると、ハルと別れてから三十分が過ぎていた。 (あいつの事だからとっくにゴールしてるんだろうな)  絶対に怒られる。と思った矢先。  遠くで俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。  ハルだ。  (ヤバイ、あいつ俺を探し始めた)  見つかる前に高台に辿り着かないと、何を言われるかわかったもんじゃない。  俺はハルの声から逃げるように足を早めた。

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