32 / 428
夏迷路 3
勢いよく角を曲がった先は、またもや行き止まり。
「っーか、なんなのこれ」
汗を拭く気にもなれない程、ガックリと肩を落とす。
俺は一生この迷路から出られないかも知れない。
この向日葵達が枯れ果てる頃、同じ様に干からびた俺の死体が発見されるニュースを想像して更にグッタリする。
その時ふと、周りより頭ひとつ高い向日葵の花に目が止まった。
「でけぇな、こいつ」
そうだ、何で目が止まったのか。
こいつ、太陽じゃなくて、俺を見ている。
「……誰かに似てんな」
近付いて、その太い茎にそっと触れてみる。
大きな葉はまるで、両手を広げているようで。
(ああ、そうか)
想像して、思わず笑いが込み上げる。
ハルに似てるんだ。
笑うハルと、よく似ている。
そう思えば愛しく見えて、その大きな花を撫でてみた、その時。
「やっと見つけた」
振り返ると、怒り顔のハルが立っていた。
「こんな所で迷子になるなよ。探しちゃっただろ」
こんな所ってお前、迷路は迷子になる場所なんじゃないのか。
迷う路《みち》と書いて迷路じゃん。
ともだちにシェアしよう!