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夏迷路 4
面倒だから黙っていると、ハルはツカツカと歩み寄り、この汗だくの炎天下でぎゅうぅと力一杯に俺を抱きしめた。
「げっ、やめ、暑苦しい!」
「その向日葵を撫でている省吾が何だか恋しているようで嫌だ」
「は?」
「誰を想像してたんだよ」
思わず噴き出しそうになって、慌ててこらえる。
お前ですけど。
でも調子に乗られても面倒臭いから、やっぱり黙っていようと思った瞬間。
文句を言う間もなく首筋に噛みつかれた。
「ってえぇ! 離せこの」
バタついても離れやしない。離れるどころか、しょっぱいとか言いながらひとの汗を舐め始めた。王子面してとんでもない変態だ。変態だし怒ってるしまた噛み付くし、勘弁してほしい。
この男、ヤキモチに関しては本当に沸点が低い。低すぎる。
こんなところで、誰か来たらどうするんだ。子供に見せちゃいけないだろ。
気がつけばシャツを巻くし上げられる始末。冗談じゃない。
「な、にしてんだばか! 離せっ」
「誰も来ないよ」
何だよその根拠のない自信。いやそもそもそういう問題じゃねぇ。
言うより先に肌を吸われ、ビクリと身体が震えた。
「ハル、まじでやめろ。キレるぞっ」
キレ気味に声を荒げると、ハルは眉間にしわを寄せて俺を睨みつける。
「心だって、浮気は許さないよ?」
してねぇよ。
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