44 / 428
これから 10
◇◇
ベッドの中でまるで卵を抱えるように、優しく俺を抱きしめるハル。
目を閉じたまま、俺の髪を撫でている。
眠いんだったら寝てくれ。
ていうかこの体勢、俺が寝れないったらない。
そぉっと身体を動かし腕から逃れようとしたところで、逆に強く抱きしめ、いや締め付けられた。地味に痛い。
「……ハル、寝れねぇんだけど」
半分目を開いたハルはほんの少しだけ微笑むとまた目を閉じ、ゴメンと呟き腕を緩めた。
「金曜日に来てくれるなんて思ってなかったから……嬉しくて」
今にも眠りに落ちそうなか細い声で呟かれた言葉。
俺は堪らなくなってハルの鎖骨に唇を当て、ゴメンと呟いた。
「……何で謝るの」
「……わかんね」
「……何が」
ハルの腕に力が入り見上げると、眠そうな目を半分開き少し不機嫌そうな表情で俺を見つめていた。
「省吾、どうした」
「……なんか、振り回してばっかじゃねーか」
「んん?」
「お前は俺に、職場の愚痴とか……不満を言わないだろ」
「言う必要ないし、省吾も言わないだろ」
「……そうだっけ」
「そうだよ」
ともだちにシェアしよう!