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これから 11
ハルは小さくため息をつくと、俺の額にキスをした。
「何かあったか? それとも俺が、何かしたか」
「……ねぇし、してねぇよ」
今度は俺の唇に触れ、吸い付くようにキスをする。
名残惜しげに離れては、再び重ね合わせる。
まるで何度も好きだと言われているように思えて、身体が熱くなっていく。
「ハル……」
ため息混じりに名前を呼ぶと、ぎゅうと抱きしめられた。
「省吾は、わかってない」
「何が」
「省吾がどんだけ俺に優しくて、俺に気を使っていて、そのせいで俺を遠ざけようとしている事に、省吾自身が気付いてない」
「……何だそれ」
「省吾は、自分が思うようにいてくれたらいい。俺は何があっても、絶対にお前を離さない。省吾が俺を嫌いになっても……泣いて懇願したって、離さない。省吾は、俺のものだ」
恐いことを、笑顔で言う。
「……俺は、ものじゃねぇ」
「うんでも省吾は俺のものだ」
「日本語おかしいだろ、じゃあハルは俺のもんかよ」
「俺は俺のものだよ」
笑顔のハルに呆れながら、俺は目を閉じた。
今、こいつの隣で眠れる事を、幸せだと思った自分に、問いかける。
幸せって、なんだろう。
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