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これから 16

「ほんの少しでも……」 「うん?」 「省吾に不安を感じさせるのは嫌だ、耐えられない」  苦しそうに再び眉間にしわを寄せるハルを見て、思わずため息がもれる。 「お前ね……過保護ってんだよそーいうの」 「……嫌なものは嫌だ」 「俺はそんなに弱くねぇよ」  それから身体を起こし、ベッドに胡座をかいた。  ハルも俺の前に座り、少し不安げな表情で俺をじっと見つめる。 「先の事なんて、わかんねぇけど」  言葉を繋げながら、込み上げる緊張を和らげるように頭を掻く。 「歳とって、俺とお前が爺さんになっても……一緒にいる気がする。今日一日、ずっとそんなこと考えてた」  瞬きをするハルに、だからさと言葉を続ける。 「明日、不動産巡りすっか」  パソコン見てんのも疲れたと笑うと、ハルは驚いた表情で机の上のPC画面に目を向けた。 「俺、お前と一緒に暮らしたい」  再びハルが俺を見つめた次の瞬間、死ぬかって位強く、抱きしめられていた。 「く、苦し……離せ!」 「嫌だ」  俺を殺す気か。 「嫌だ……離さない」  俺はハアとため息をつき、それから少し笑った。  んじゃ、離すなよ絶対。

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