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未来は僕らの手の中 2
重い足取りで部屋に戻ると、ハルはにこやかな表情のまま腕を組み、ベッドの上で胡座を掻いている青木を見下ろしていた。
「青木くんは何してるのかな、省吾のベッドの上で」
無駄に変なトコ突っ込むなよ頼むから。
「ここ、俺の定位置だったから。最後に名残を惜しんでるとこ」
アハハと笑いながら再びベッドに倒れ込みゴロゴロするアホ木。その様子をハルは張り付いた笑顔のまま、じっと見下ろしている。怖すぎる。
(青木、お前だけはマジで憎めねーけどやっぱ後で殴る)
お前の無邪気な行いのせいで、俺は後でハルに酷い因縁をつけられて、めちゃくちゃにいたぶられる羽目になるんだよ。あの目は絶対そうだ。
「小出くんも引っ越しの手伝い?」
青木の何気ない一言をスルーしかけて、ハッとする。
(待て、まずい……)
「ああ、これから一緒に暮らすし」
「これから……香取と、小出くんが?」
「そう」
身体を起こし、あれ?と首を傾げる青木と、その様子を不思議そうに見下ろすハル。
俺は頭を抱えてついさっき自分が漏らした言葉を後悔した。もう遅い。
それがどうかしたかと言葉を返すハルと、多分苦虫を噛み潰した様な顔をしている俺。青木は交互に見上げてから、口を開いた。
「香取、誰と住むのかって聞いたら彼女って言ってたのにー。なあんだ、小出くんとシェアするんじゃん」
なんだよもーと笑う青木。
ああ……もう。どうしようもねぇ。青木は何も悪くない。ハルが切れる前に言うしかない。
「……彼女なんていってねぇ。恋人っつーたんだ馬鹿」
最悪だ。
最悪だ。
「え?……そーなの?」
俺の言葉に機嫌をよくした表情のハルと、ただでさえでかい目を更にでかくして固まった青木を見つめながら、俺は心の底からため息をついた。
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