53 / 428

未来は僕らの手の中 3

◇◇◇  引っ越しの荷物なんて大してない。  職場の配送センターから口利きで軽トラを借り、自分で運べば一日で終わる。  新居は3LDKと広め、南向きの四階角部屋と好条件。  ハルの荷物や家具達は既に整頓され配置されていた。 「あとは新調するものを買いに行くだけだな」  ウキウキした表情のハルから新居に視線を移し、今まであったものがない事に気付く。 「お前んとこのベッド、どうしたんだよ」  俺のは付属品だったから置いてきたけど。 「ベッド? 捨てた」 「捨てた? なんで」 「ベッドは新しいのを買う」 「何でだよ勿体ねぇな。結構広かったしまだ全然使えたのに」 「早く決めないとなー、新しいベッド」  納得のいかない俺の言葉に耳を貸す気は一切ないようだ。  ニヤニヤしているけど一体何を想像してんだか。大方、キングサイズを買おうとしているとかそんなとこだろ。絶対阻止するけど。 「とりあえず腹減ったし、何か食いに行こうぜ」  ついでに新しい街の散策もしようと、ハルは嬉しそうに笑った。  あ。  その顔いいな。  つられて俺も笑った。 (今日から……)  新しい街で。  新しい部屋で。  隣にはハルが居る。 「……悪くねぇな」 「ん?」  振り返ったハルを見上げると、ビルの隙間から青い空が見えた。  未来はきっと、悪くない。 <終わり> ◇◇

ともだちにシェアしよう!