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未来は僕らの手の中 3
◇◇◇
引っ越しの荷物なんて大してない。
職場の配送センターから口利きで軽トラを借り、自分で運べば一日で終わる。
新居は3LDKと広め、南向きの四階角部屋と好条件。
ハルの荷物や家具達は既に整頓され配置されていた。
「あとは新調するものを買いに行くだけだな」
ウキウキした表情のハルから新居に視線を移し、今まであったものがない事に気付く。
「お前んとこのベッド、どうしたんだよ」
俺のは付属品だったから置いてきたけど。
「ベッド? 捨てた」
「捨てた? なんで」
「ベッドは新しいのを買う」
「何でだよ勿体ねぇな。結構広かったしまだ全然使えたのに」
「早く決めないとなー、新しいベッド」
納得のいかない俺の言葉に耳を貸す気は一切ないようだ。
ニヤニヤしているけど一体何を想像してんだか。大方、キングサイズを買おうとしているとかそんなとこだろ。絶対阻止するけど。
「とりあえず腹減ったし、何か食いに行こうぜ」
ついでに新しい街の散策もしようと、ハルは嬉しそうに笑った。
あ。
その顔いいな。
つられて俺も笑った。
(今日から……)
新しい街で。
新しい部屋で。
隣にはハルが居る。
「……悪くねぇな」
「ん?」
振り返ったハルを見上げると、ビルの隙間から青い空が見えた。
未来はきっと、悪くない。
<終わり>
◇◇
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