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逢いたかったひと 2
有無を言わさぬ勢いで腕を捕まれ、ちょっと待ったと声を上げるとそいつはクルリと振り返り、一方的に言葉を発した。
「友達の名前位知らねぇと変だよな。あんた名前は」
人に聞く前に自ら名乗れと教わらなかったのかこいつは。
と思いつつも、ギュッと俺を見上げる大きな瞳は妙に素直で真っ直ぐで、こちらも思わず素直に従ってしまう。
「小出、春樹」
「ふぅん、ハルね。よし」
「よし、ておい……」
訳がわからないまま店内に引き込まれ、その足で店長に紹介され、気が付けば望んでもいないのにバイト要員として雇われていた。
後々聞けば、自分が追い出したバイトの穴をサクッと埋めたいが為にたまたま目についた俺を引っ張りこんだという、とんでもなく自分勝手でいい加減ではた迷惑な言い分に驚愕した。
「あの野郎、俺のケツばっかり触るもんだからアッタマ来てぶん殴ったんだよ。そしたらガキみてーに辞めやがって。あ、思い出したらまたムカついてきた」
「それは災難だったと思うけど、比率で言ったら災難度は俺の方が上じゃないか」
ガシャガシャと皿洗いに専念しながらも文句を言うと、奴はそれを完全スルー。な、なんて勝手な奴なんだ。
「あ、名前言ってなかったよな。俺、香取」
今更過ぎる。凄いな。
「……皆、省吾と呼んでいるから俺もそう呼ぶ」
「ふぅん、まあ何でもいいよ」
どうでもいいとでもいいたげな表情で、さっさと更衣室へ入って行った奴の背中を蹴り飛ばしたい衝動に駆られつつも、必死で大人な対応に勤めた俺を誰かほめて欲しい。
それが省吾との出会いだった。
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