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逢いたかったひと 21

「……ねぇ、やっぱり今日、大学行くの?」  テーブルの向こう側から、猫のような瞳で俺を見つめる。 「行くよ、研究室にも行きたいし」 「夜はバイト……なかなかゆっくり一緒にいられないね」  しょんぼりしながらパスタをつつく彼女。 (珍しいな)  必要以上に相手に依存しない彼女は付き合い方もドライで干渉もさほどない。お互い仕事に勉強に忙しく、会える日が少ない事にも不満を口にする事はなかった。 「クリスマスは休みとれたのよね?」 「ああ、希望通り二十四日。二十五日は出勤だけど」  よかったと言って微笑む彼女はやはりいつもと少し違って見えた。 「ハル、私達付き合い始めてもうすぐ十ヶ月よね」 「うん」  付き合い始めたのは彼女が卒業する少し前辺りだったなと、ぼんやり思い出す。  記憶力は良いと自負しているが、何しろ記念日云々にはどうにも興味がなく、日付までは思い出せない。身体の付き合いの方が先だったという事は覚えているけれど。 「ハルは私の事、相変わらずあまり興味ないのかな」  どういう意味かと考えていると、彼女は正面から俺をじっと見つめた。  猫のような、綺麗な瞳。 「ハルの誕生日は二月十一日。建国記念の日だねって、付き合う前に話題になったよね」  そんな事あったな。 「私の誕生日は?」 「え?」  思わず聞き返し、フォークを持つ手が止まる。  彼女の誕生日。思い返しても、記憶にない。 「知らないよね、聞いてくれた事ないもの」 「……ごめん」 「言わないで待ってたんだけどな。聞いてくれるの」  固まっている俺が可笑しかったのか、彼女は頬杖をつき上目遣いで軽く俺を睨んだ後、ふふっと微笑んだ。 「いいの。記念日嫌いのハルがちゃんとクリスマス空けてくれてるから」  バイト連中に感謝だなと心の中で呟いた時、彼女はぽつりと言った 「誕生日なの」 「え?」 「十二月二十四日。私の誕生日」  楽しみにしてるねと微笑む彼女の前で、俺は瞬きを繰り返した。

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