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逢いたかったひと 24
「……店長、こんな所で悪戯は厳禁です」
「悪戯じゃないよ、省吾が辛そうだから」
ニコニコと憎めない表情をされても困る。
俺はため息をつき、とにかく、と省吾の肩に手を置いた。
「こいつ死んでますから、ひと吐きさせて家まで送ります」
ズルイとのたまう店長を追い払い、ヤレヤレと省吾に向き直る。
便器に腕を置き、グッタリとしゃがみ込んだ省吾は既に屍だ。ワインを飲んで、あっという間に足に来たんだろう。
「全く……省吾、吐けるか」
「……ムリ……」
先程と同じ回答。
俺は省吾の腰を持ち上げ、頭を下げさせ身体を固定した後、自分の人差し指と中指を省吾の喉奥へ突っ込んだ。無理矢理吐かせるにはこれが一番手っ取り早い。
予想通り、省吾はガハッと呻き、直ぐにげぇげぇと吐き始めた。
「よし……吐いたら楽になるからな。全部吐け」
背中をさすりながら声をかける。
一度吐かせればあとは勝手に上がってくる。
「……苦し……」
「大丈夫、全部吐けば苦しくなくなる」
子供みたいに素直に頷く省吾の背中を、俺はさすり続けた。
バイト連中が呼んでくれたタクシーに乗り込み、省吾のアパートに着いた頃には夜中の三時を回っていた。
あのあと水を飲ませてさらに吐かせたおかげで、気持ち悪さはなくなったようだが、ろれつも回らず完全に酔っ払いだ。
「省吾、着いたぞ。鍵はどこだ?」
「……ない……」
「ないわけないだろ全く……あった」
上着のポケットを漁り、鍵を取り出す。
省吾を抱えながら部屋に押し入り、敷きっ放しの布団の上に転がした後、俺も畳に転がった。
「……疲れた」
サークル飲みで散々介抱役をしてきた経験が今報われた気分だ。
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