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逢いたかったひと 25
「……みず……」
呻くような声が聞こえ、省吾へ向き直り聞き返した。
「水? 水が飲みたいのか」
目をつぶったまま頷く省吾の額に手を当て、待ってろと立ち上がった。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しグラスを持って戻ったものの、起き上がれそうもない。
俺はグラスに注いだ水を一口喉に通してから再び水を口に含み、省吾の口に指を当て、そっと押し開いた。
ほんの少し開いた口に、口移しで水を流す。
ゴクンと音を立てて喉が動いた。
もう一度、口移しで水を飲ませた。
再びゴクリと動いた喉に、指を滑らす。喉仏に触れ、鎖骨のくぼみを撫で付ける。
水を含み、省吾の口元へ唇を重ね合わせる。ゴクリと喉を通る音が聞こえたあと、省吾の口内へ舌を押し込み、省吾の舌を絡め取った。柔らかな唇に吸い付き、角度を変えて何度もキスを重ねた。
「……んん……」
省吾は苦しそうに眉間にシワを寄せ、溢れた水はこぼれ顎から首すじへと流れていく。
「……ハ、ル……」
省吾の口から微かな声が漏れた瞬間、俺は省吾の身体を両腕で強く抱きしめていた。
「店長に触られるなんて……油断しすぎだろう?」
ざわざわと押し寄せてくる感情を、止められない。
「……ハ……」
「省吾」
ほんの少し、省吾の瞼が開く。先ほどの光景を思い出すだけで、身体が焼けるように熱くなる。誰かが省吾の身体に触れるなんて、見たくない。許せない。
(省吾が、俺の……)
俺だけのものだったら、いいのに。
涙で濡れた省吾の黒い睫毛に、震える指先で触れる。
「ごめん……」
呟き、瞼にそっとキスをした。
この、口も。
髪も、耳も、胸も。
腕も、指先も。
この身体、全部。
「省吾……」
誰にも、触らせたくない。
(こんな感情、知らない……)
俺は省吾を抱きしめた。体温が伝わり、鼓動を感じる。
「省吾」
総てが、愛しい。この人の総てが、欲しい。
抑え切れない程の感情。
苦しい。
苦しい。
「省吾……」
どうかもう一度、俺の名前を呼んでほしい。
求めて欲しい。
「好きだ……」
愛してほしい。
俺を、愛して。
行き場のない気持ちは高まるばかりで。
苦しくて、苦しくて……。
俺は省吾を抱きしめた。
強く、強く。
逢いたかった。
逢いたかった。
俺はずっと、逢いたかった……。
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