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逢いたかったひと 38
連休夜の首都高速を走りながら、馬鹿だなと冷静に思う自分がいる。
馬鹿でもいい。会いたいのは俺だけでもいい。
それでもきっと省吾は呆れ顔で、俺を迎え入れてくれる。
それは期待ではなく、確信だった。
フロントガラスに雫が当たり、雨が降り出したと気付く。路面が光を反射し輝き始めた。春の夜の雨は霧のように視界を曇らせ、俺は前方のブレーキランプに目を凝らす。
俺はもうずっと、あの後ろ姿を追いかけたかった。
追いかけて、抱きしめて、もがいても縛り付けて、離さないと叫びたかった。
今、会えるなら、俺はもう何をしたっていい。
ただ、抱きしめたい。
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