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会いたいと願う気持ち(大学四年生)1

 生きていると、まあ色々な事が起きるものだ。  バイト先で男に尻を狙われたり、三年つきあっていた彼女が知らねえ男とセックスしてる現場に遭遇したり、黙って別れたらバイト先にまで押しかけられて逆ギレされてめちゃくちゃ責められたり。  帰ったと思ってたバイト仲間が、何故か更衣室にいたり。  目の前で慌てたように視線を泳がす男を見つめながら俺は考えた。  こいつ、さっき正面口から帰ってったはずだよな。 「……なんでいんの」 「いや、家の鍵を忘れて裏口から……」  様子からして、さっきの修羅場を聞かれていたんだろうなと想像できる。 「ふぅん、あっそ……」  よりにもよってこいつにかよ、と内心思った。  最近新しくバイトに入った、小出春樹。T大理工学部四年生。  俺の尻に執着する変態バイト仲間を辞めさせた直後に店の前を通りかかったというだけで俺に目をつけられ、半ば強引に声をかけたら急遽バイトに入ってくれたんだから、お人よしというか、気の良い男だ。突然のアクシデントにも動じない、アドリブに強い男だなと感心していたら、天下のT大生だった。  頭が良い上に、見た目も良い。男の俺からみても、かなりのイケメンだなと思う。  いかにも順風満帆そうな男にあんなくそみっともねぇ修羅場を聞かれた事に、数秒落ち込んだ。  でもまあ聞かれたもんはしょうがねぇかと気をとりなおして着替えていると、順風満帆男からラーメンでも食いにいかないかと誘われた。  正直、大して親しくしているわけでもないし、これまで二人で飯を食いにいったことなどない。疲れてるし面倒だなと思ったし、断るつもりで口を開き、けれどふと考えがよぎって言い留まった。  このまままっすぐ家に帰るのもけっこうキツイなと思ったのと、軽く呑んで帰るのも良いなと思ったのと、そういや外はクソ寒いなと思ったのが、重なった。  そう思ったらたまたま目の前にいたのがハルで、それだけだった。 「いいよ」 「え?」 「お前から声かけて聞き返すなよ。寒いし、おでんのがいい」 「おでん……」 「嫌ならいいけど。ひとりで行くし」  自分から声をかけておいて驚いた表情で聞き返してくる男に軽くイラついたけれど、直後にやたらと興奮気味に行くと返事をするものだから、へんな奴だなと少し笑った。

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