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会いたいと願う気持ち 3

 この三年間、つきあっていたといってもデートらしいデートなんて殆どした事はなかった。会う時は大抵バイト後の夜で、俺の家か京香の家。時々不満や文句も口にされたけど、あからさまに不機嫌な態度を取られる事はなかったし、バイトを減らせと言われる事もなかった。 (ずっと、我慢してたんだろうな)  京香は頭の良い女だったから、言ったところで俺が聞かない事もわかっていたんだろうし、言えば面倒になって別れると言い出すだろうとも思っていたのかもしれない。思い返せば思い返すほど、自分は酷い彼氏だったなと今更すぎるが反省する。 「まあ何にしろ、続けるのも終わりにするのも、お前次第っぽいな」  ハルの言葉に耳をかたむけ、少し考えて「つーか終わったし」と返した。  浮気現場を目撃した時は流石に衝撃だったし、腹も立ったし、悲しかった。  けれど、京香を責めてなじってどうこうしたいとか、やりなおしたいとか、別れたくないとか、状況を打破したいという気持ちは起きなくて、そう、それだけだった。 「……俺って冷たいんかな」  うっかり口にでてしまったことすら気付かない位、ぼんやりと口に出してしまった。  今に始まった事じゃない。子供の頃から思っていた。大事なものは母親の存在だけで、周りの何にも興味が持てない。執着出来ない。自分の事すら興味がなかった俺は勿論、暗くてつまらない子供だった。小学の頃に兄貴分の晃と出会って外へ連れ回されるようになってからは少しマシになったかもしれないけど、根本的な部分はかわらなくて、京香にしたってそうだった。  根っこの部分で他人に興味を持てない。信頼できない。だから心も開けない。  芯まで味が染み込んで柔らかくなっている大根を箸で割り、一口齧ったところで、ふいに隣のハルが口を開いた。 「そんな事を考えるなら、お前は優しいんじゃないの」  ハルの言葉が頭の中を一周回って、齧った大根をごくんと飲み込んだ。  優しい。何をどう解釈したら俺が「優しい」になるんだ。

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