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会いたいと願う気持ち 4
(なに言ってんだ、こいつ……)
ちらりと隣に視線をむけると、何食わぬ顔でちくわを口にいれようとしているハルの横顔があった。なんでもない顔をして、好物のちくわを食べようとしている。
視線に気付かれたのか、ハルもこちらへ視線をむけてきたので、目が合う前に慌てて視線を逸らした。わからないけれど、急に恥ずかしくなって目をあわせられなかった。
ハルと言葉を交わした回数は、思い返してもそれ程ない。知り合ってからまだ一ヶ月と少し。そんな短い期間で、こいつは俺の何を観察して、そんな言葉を口にしたんだろう。
そんな事を言う奴は、いままでひとりもいなかった。
(そういや今日鉄板落っことした時のあいつ、なんかめちゃくちゃ動き早かったな)
ふと、バイト中に火傷をした時の事を思い出した。今日の俺は本当に頭から半分魂が抜けかかってて、忙しい時間帯にあろうことか出来上がった料理を床へぶちまけて、ついでに自分の腕に鉄板を落としてめでたく焼印をつけてしまった。
「……そういや今日の、ちゃんと礼いってなかったな」
「え?」
「派手に料理ぶちまけて腕に焼印つけた時のさ。おまえのお蔭で色々助かった」
「ああ、別に……腕、まだ痛いか?」
「いや、まあ痛いけど、あん時すぐ冷やしたから多分かなり軽症ですんでる」
「そうか、よかった」
「サンキューな」
言ってから妙に恥ずかしくなって、ハルの顔を見ずに黙って大根を齧った。
ハルが店の親父に熱燗を一本注文して、出てきた熱い酒を俺のお猪口に注いでくれたので、俺はそれを一口飲んだ。じわじわと喉の奥から胸の奥まで染み渡っていく熱が心地よい。
俺達はそれからしばらく無言のまま、酒を呑んだ。
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