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会いたいと願う気持ち 5

◇◇◇  終電を逃したというハルを自宅アパートへ連れて行き、部屋で軽く飲みなおしたところまでは覚えている。  多分俺は途中で寝落ちて、ハルが布団を敷いて寝かせてくれたんだろうと思う。それは有難い。布団はひとつしかねぇし、こたつで寝るのも辛いだろうし、同じ布団で一緒に寝るのもギリギリわかる。冬だしな。寒いしな。けどこの状況はおかしいだろ。 「おいっ、てめぇ起きろ、人を抱き枕にしてんじゃねー!」  背中に張り付いたまま両腕でがっしりと俺の腰をホールドしているハルの顎に思い切り頭突きをくらわすと、呻き声とともにやっと腕の力が緩んだ。 「痛い……」  寝たままの格好で顎をさするハルに自業自得だと悪態をつき、布団から這い出て台所へ向かった。  眠気覚ましに冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを取り出し、グラスを二つ持って戻ると、ぼやっとした表情のハルがぼんやりとテレビを観ている。観ているというより、眺めているといった方が正しいか。常にキリッとしてそうなこいつも、起き抜けはこんなぼけた顔をするんだなと知って笑いがこみあげる。  グラスに水を注いでやれば、ふにゃけた表情でお礼を言われた。酒が抜けてないんだろうかと不思議に思いながら、水を一気にがぶ飲みして喉と頭をシャキッとさせる。時計を見れば午前八時。 「俺は大学行くし、風呂入ってすぐ家出るぞ。ハルも入るか? 風呂」 「え、一緒に?」  驚いた表情で返答された。 「お前……頭打ったんか? 俺の後に決まってんだろバカ」  今朝の抱き枕といい、一緒に風呂に入る思考といい、寝起きのハルは相当にとんちんかんだ。朝の弱いやつなんだなと理解して、さっさと風呂場へ移動した。  風呂場から出て直ぐに、空きっ腹をくすぐるにおいがしてきて驚いた。味噌汁のにおいだと直ぐにわかる。これはまさか、ハルが料理をしているのかと慌てて部屋に戻ってみれば、なんと朝食の準備が整っていた。 「マジ? すげぇ、飯作ってくれたの?」  ほかほかと湯気の立つ白飯と味噌汁。綺麗な半熟目玉焼きにソーセージが二本ずつ添えてある。  しかも俺がシャワー浴びてるほんの少しの時間で仕上げるなんて、どんだけ手際が良いんだ。T大生は勉強も出来て、料理も出来るのか。

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