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会いたいと願う気持ち 6
「朝食は大事だからな、泊めて貰ったお礼。っていっても簡単なものだけど……コンビニよりは良いだろ」
「いやいやすげぇよ、味噌汁と白飯だけでも感動なのに、目玉焼きとソーセージまで焼いてくれてんの、完璧朝ご飯じゃん。やべぇ、めちゃくちゃ嬉しい」
「おおげさだな。でもそういってくれるなら作ってよかったよ」
「こんなん数分で作れちゃうなんてすげぇよ。お前、いつでも嫁に行けんなー」
冗談ついでに笑って返せば、ハルもまんざらでは無い様子で喜んでいる。突っ込みはないのか。面白い奴だなと思いながら、二人でこたつに入り朝食を囲んだ。
いただきますと手を合わせ、朝食を食べ始めた。テレビは芸能ニュースが始まり、俳優の誰が不倫したとか、謝罪会見はいつだとか、くだらない話題で盛り上がっている。
「こういうのさ、ほんとどーでもいいって思うよなあ。お前こういうの気になる?」
「いや、全然」
「だよなあ。当事者以外の他人が首つっこんで熱弁する話題かって思うよ、くだらねぇな。チャンネルかえるか」
時間帯のせいもあるだろうが、番組を変えても話題はどこも同じで、諦めてリモコンを手放した。テレビは気にせず朝食に集中しよう。
味噌汁の具はじゃがいもとワカメで、汁は薄すぎずしょっぱすぎず、絶妙に美味い。ハルを泊めたら朝食を作ってもらえるなら、是非また泊めてやろう……とほくそ笑んでいると、ふいにハルが口を開いた。
「省吾にとって『どうでもよくない事』って、どんな事」
「ん? なんだよ急に」
ソーセージを咀嚼しながらハルの顔を見つめれば、俺と目を合わせるのを避けるように視線を下げて、味噌汁をズズズと啜った。
「いや、『どーでもいい』って、省吾の口癖だなと思って」
「あー、そうだな、そうかもしんねぇな」
言われて納得したけれど、改めて聞かれてもいまいち頭にポンと浮かび上がるわけでもない。
「どうでもよくない事、ねぇ……ぱっと思いつくのは母ちゃんくらいだな。俺の願い事って毎年母ちゃんの健康だけだしな」
「お母さん……」
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