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会いたいと願う気持ち 7

「細かい事考えればまあ、世話になってるバイト先とか、地元連中とかのこととかも……あーでも基本どーでもいいな。考えてみれば、こんなんだから京香にボロクソに言われてもほんと、何もいえなくて正解だったな」  はははと笑った俺に対して、ハルは神妙な顔をしている。そんな顔する内容かと首をかしげながら、お前はどうなのと聞き返してみた。 「俺も似たようなもんだよ」 「お前、適当に返しただろ今」  まあどーでもいっけど、と口にしてから、ああ確かに口癖だなと気付く。ハルは「また言ったな」といって笑った。どうでもいい会話が意外にも楽しくて、こいつとならまた二人で飯を食いに行っても良いな、なんて自分にしては珍しい事を考えながら、俺も笑った。 ◇◇◇ 「省吾、最近幸田見た?」  ハルと五十嵐と俺の三人で賄い飯を食べている最中、ふと思い出したように五十嵐が言った。  今夜の飯はハンバーグだ。国産牛肉百パーセントの粗挽きハンバーグはガツンとくる食べ応えで、この店の看板商品でもある。美味い飯を食べて気分良くなっているところに思い出したくもない名前を出されて、一気に気分が悪くなった。 「ああ? 見てねぇよ、見たくもねーし」 「まあそうだろうけどさ、この間三上がこの近くで見たらしいんだよ。いかにもガラの悪そうな奴らと歩いてたっていうから、ちょっと気になってさ」 「ふぅん、どうでもいいわ」  付け合せのベイクドポテトを口の中に放り込み、これも美味いなと味わっていると、五十嵐は「それでさ」と話を続けようとしている。まだ続くのかと軽くうんざりした視線をむけると、まあ聞けよと肩をたたかれた。 「あんな辞めさせ方したからさ、省吾に逆恨みしてるんじゃないかって、皆心配してるんだよ。闇討ちにでもあうんじゃないかってさあ……夜道とかなるべく一人で歩くなよ」 「なんだそれ、皆して心配症かよ。夜道なんて、バイト帰りはいつも一人で歩いて帰ってるっつーの」 「何かあったら勝負なんて考えないで走って逃げろよ、あとなるべく明るい道を歩くように」  お前はオカンかと突っ込んでも「心配だからさあ」と言うものだから、わかったよと頷いた。心配してくれるのはありがたいけれど、何かあったらその時考えるしかない。

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