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会いたいと願う気持ち 8

「幸田って、俺にぶつかってきた男か」  今までじっと会話を聞いていただけのハルが突然呟いたので、五十嵐と二人で視線をハルへと向けた。起きてたのかこいつ。 「ああ、あの日ね。幸田がぶつかったっていうか、省吾が幸田を蹴り飛ばして転がった先にハルがいたというか」 「五十嵐、ほんとそういうとこ細かいな」  じろりと五十嵐を睨むと、はははと笑ってごまかされた。壁時計を見ればそろそろ休憩時間終了で、二人は煙草に火をつけている。 「俺はもう行くわ」  これ吸ったら行くからという二人を置いて、煙草を吸わない俺は盆を持って立ち上がり、一人で休憩室を出た。 ◇◇◇  バイトを上がったのは二十四時を少しまわった頃。ハルと一緒に外へ出ると、夕方から降り出した雨は止む事無く、更に雨足を強めていた。 「夜中には止むかと思ってたのに、むしろ強くなってんな」  バサリとビニール傘を広げて真っ黒な空を見上げた時、同じく傘を広げたハルに名前を呼ばれた。 「省吾、今日は省吾の家に泊まりに行ってもいいかな。明日の昼間用事ないし」 「ふぅん? 別にいいけど。んじゃコンビニ寄って酒買って帰るか」 「うん、明日の朝食の食材もなければ買って行こう。何か作るから」 「マジか、いいねーそうしよう」  明日の朝はハルが朝食を作ってくれると聞いて、嫌な雨も気にならない程度に気分が上がる。ハルと俺は、深夜の雨の中を並んで歩き出した。   「だめだ、もうスニーカーの中もびしょびしょだ」 「俺も。夜の間に新聞紙とか丸めて詰めておくと翌日大分違うんだけど」 「新聞紙かー。うちにはねぇなそんなもん」  途中のコンビニで買い物をして、大通りを離れて住宅街へと入る直前の出来事だった。  ほぼ同時に黒いミニバンが通りに入ってきたのが目に入り、道の端へ避けたところで車は俺の真横に止まり、同時に後部座席のドアが開いた。  ぎょっとした次の瞬間には男に腕を掴まれていて、車内へ引きずりこまれかけたところを、気付いたハルが俺の身体を押さえ込んだ。

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