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会いたいと願う気持ち 12
「こんな凄い人混みだってわかってたら絶対断ってたぞ。こっちは二日酔いだっつーのに」
「あはは、ごめんごめん。友達が行けなくなって、どうしようかなって思ったんだけど。付き合ってくれてありがとね。クリスマスに予定のない息子で助かったなー」
「デケェ声で言うなっ」
飲み始めていたビールを吹き出しそうになり、慌てて口からグラスを離す。とんでもない母親だ。
「まあまあ。ホットワイン飲む?甘いからアンタ絶対好きな味よ」
「いらねー」
二日酔いの原因がワインなだけに、今はワインの色も見たくない。
目の前でソーセージの盛り合わせにフォークを突き刺している母親は、息子の体調なんておかまいなしで楽しそうだ。先ほど購入した雑貨を袋から取り出し、見てこれ可愛いよねぇと嬉しそうに眺めている。
(まあ、喜んでるならいっか……)
母親から目を離し、ポテトフライを口に放り込む。それをビールで流し込んで、ふと周囲に目を向けた時、休憩ブースの先の通りを行き交う人の流れの中で見知った人物を発見した。
(ハルだ)
人混みの中でも頭ひとつ分背が高い上に、遠目からでもわかる端正な顔。色白で髪も目も色素が薄くて、パッと目をひくイケメンだから直ぐにわかった。人混みで良く見えないけれど、隣には彼女がいるんだろう。今日はバイトも休みをとっている筈だ。まさかこんな所で会うとは。
「どうしたの?」
視線が止まっている俺に気付いたのか、母親が顔を上げた。
「バイト仲間が居た」
「えーどこどこ、挨拶しようか」
母親の事だからうっかりすると本当に行きかねない。
「行かねぇよ、多分彼女と来てるんじゃないかな。もう見えなくなった」
「そっかあ、クリスマスだもんね。省吾も来年は可愛い彼女とデート出来るといいねぇ」
「大きなお世話だ」
「彼女出来たら紹介してほしいなぁ。ねぇ?」
「さぁな、そのうちな」
ニコニコしながらワインを飲む母親を軽く睨み、目の前にあるソーセージにフォークを突き刺した。
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