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会いたいと願う気持ち 13

 ◇◇◇  母親と別れてからバイト先へ直行し、早めに着いたので厨房で仕込みを手伝っていると、出勤してきた連中其々に「昨日はちゃんと帰れたのか」と心配された。昨晩の俺はかなりグロッキーだったらしく、記憶がないだけに恥ずかしい。  店長には「(俺を)介抱していたらハルに邪魔をされた」と言われ、バイト仲間達には「(俺が)店長に悪戯される前にハルが助けに入ってた」と言われた。どう考えても確実に後者が正だろうな。  朝起きたら布団で寝ていて、コタツの上には「鍵はポストに入れておく」とハルからのメモが置いてあったから、家まで連れて帰って介抱してくれたらしい。酒の一杯も奢らないといけないなと反省した。またおでん屋に連れて行くか。  レストランは予想通り大繁盛で、始終満席状態。俺は厨房から一歩も出る事なく、ひたすら裏方で汗だくになりながらクリスマスメニューを作り続けた。ラストオーダーが終了する頃には皆疲れを通り越して逆にテンションが上がっていて、最早ワーキングハイの域に入っていた。こういう日は大入り手当も付くから、俺としては有り難い。  三日連勤の俺だけ早上がりさせて貰う事になり、いつもより一時間早く仕事をあがった。流石にイベント時期の三連勤は疲れも出るので助かる。今日は真っ直ぐ帰ってサクッと寝よう、などと考え事をしながら正面ドアから表に出て、店の前にハルが立っていたものだから驚いた。 「あれ、ハル。なんだよ今日は女と泊まりじゃねぇの」  冗談交じりに声をかければ、泊まりじゃないよと笑って返された。まあ深く突っ込む内容でもないし、ふぅんと聞き流す。こんな時間に店の前を通りかかるってのも不自然だし、暇を持て余してバイト先に顔を出したんだろうか。  笑顔のハルを見つめ、ハッとして声を上げた。そんな事よりも、俺はハルに言う事があったじゃないか。 「それより昨日は悪かった! 皆から話聞いてさ……朝起きたら布団で寝てるし、お前のメモ書きあるし、記憶ねーし」 「昨日の省吾は完全に酔っ払いだったよ」  はははと笑うハルの前で、両手を合わせて謝罪した。 「めちゃめちゃ吐かせてくれたんだって? 店長とトイレいったとこまでは覚えてんだけどさ……そっから記憶ねぇんだよな」 「そうか、でも今は想像していたよりも元気そうだな」 「朝は二日酔いでしんでたけどな。お前はなんでここ居んの? 出かけからの通り道じゃねぇだろ」

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