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会いたいと願う気持ち 14
何気なく思った事を口にすると、ハルは少し間を置いてから、まあ、暇になったからさと言って笑った。
なんだ、やっぱり暇になったから顔出したんだなと納得していると、更に一言付け加えられた。
「省吾がしんでないか、気になってさ」
「マジか? お前ってホントにいい奴だな」
昨日は酔っ払いの介抱役を買って出て、今日は心配して様子を見にきてくれるなんて、一体どんなお人好しだ。
「帰るだけなら少し付き合えよ。昨日のお詫びに酒奢る」
「奢らなくていいけど、飲むなら付き合うよ」
軽口を言い合いながら二人並んで歩き出す。仕事で身体を動かしたせいか、疲れていても気分は悪くない。ハルにも「どうした、省吾なのにテンション高めじゃないか」と逆に心配された。普段の俺はそんなに低いんだろうか。
コンビニ前に差しかかり、クリスマスケーキの店頭販売が目に入った。こんな時間まで店頭販売とは、コンビニバイトもご苦労様だな……と思いながら横目で眺め、ハタと立ち止まる。
目に入ったのは「ホールケーキ半額」の文字。
「どうした?」
ハルも立ち止まり、俺の視線を目で追ってから軽く首を傾げた。
「ケーキ食べたいのか?」
「嫌いじゃない。たまに安くなってたらホール買いする位」
俺にとってはホールというのが重要だ。ケーキはホールのままザクッとフォークを刺して食べるのが最高に美味いからな。
俺は売ってる中で一番小さい四号サイズのチョコレートケーキを購入した。
視線に気付いて振り返れば、ハルが不思議なものを見るような顔つきで、ケーキを手にした俺を繁々と眺めている。俺の顔が何かおかしいんだろうか。
半分やるよと声をかけたら、全部一人で食べたいんじゃないのかと笑われた。
普段なら全然一人でもいけるけど、そういえば今日はクリスマスだなと気付き、二人で食べるのも良いかと考えた。
「予定変更。外飲みやめて家飲みにしようぜ」
「俺は構わないけど、家だとまた酔っ払うまで飲むんじゃないか?」
「昨日の今日でそこまで飲まねぇっつーの。酒買って帰ろうぜ」
ハルの忠告を軽く受け流して店内へと移動する。ハルも了承したようで、俺の後をついてきた。お互い腹は減ってないので、アルコールと軽いつまみを買って、俺のアパートへと向かった。
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