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会いたいと願う気持ち 16

 再び頭と上半身を押さえ込まれて、息が上がる程に口内を犯された。力任せに暴れても勝てない。男の俺が男のハルに力で負けて、蹂躙されている事が許せなくて、あのハルが俺にこんな事をするのが信じられなくて、信じられなくて、悔しくて、悲しくて……抵抗する力を手放した。  やっとハルの力から解放されて、半ばなげやりな気持ちでハルの顔を見上げると、今にも泣きそうな顔をしている。 (ふ、ざけんな……)  なんでお前がそんな顔をするんだ。泣きたいのはこっちだ。友達だと思っていた奴に、無理矢理押さえつけられてこんなことされて、あげくにそんな顔されて、俺はどうしたらいいんだ。泣きたいのは、こっちだ。 「帰れ」  これ以上一緒に居たくなかった。顔も見たくなかった。声を上げて叫びたい気持ちを、深夜だからと必至で押さえ込んだ。消えろ、今すぐここから消えてくれ。 「……ごめん……」  今更すぎる言葉を口にして、ハルは部屋を出て行った。  玄関のドアが閉まる音が聞こえて、ハルの足音が聞こえなくなるまで、俺は転がったまま天井を見上げていた。  どうしてこんなことになったんだ。  ハルは俺を友達だと言った。俺もハルは友達だと思えたのに。  あいつには彼女が居て、今日だって会っていたはずだ。なのになんでこんな事になってるんだ。 「意味がわからねぇ……」  大きく息を吐いた途端、目の奥がじわじわと熱くなって、鼻がツンと痛くなって、目尻から水が流れた。こんな事をされて、くやしくて悲しくて、俺のプライドは今、結構ズタズタだ。  なのに、ハルの声が耳から離れない。 『好きだ』 『好きだ、好きだ』 『省吾が、好きだ』  何度考えてもわからない。俺は男で、友達で、ハルにはちゃんと彼女が居て、今日はクリスマスで、ただ笑って酒を飲んで……。  また一粒、目尻から水がこぼれた。鼻水も出てきて、ズズズと鼻をすすった。この鼻水は寒いからだ。目から出たのはただの水だ。  何度考えても答えなんて出てこない。  俺は身体を起こして布団を敷き、無造作にもぐりこんで身体を丸めた。  こんな時は、考える事をやめる。どうでもいい。  俺は冷えた布団の中で目を閉じて、朝が来るのを待った。

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